Trans Eurasien Expreß seit 2002

 
erscheint i.d.R. vierteljährlich und behandelt bedeutende und/oder interessante Eisenbahnen und sonstige Transportmittel in der Welt, mit Vergleichen zwischen Japan und dem Ausland, Geschichts- und Kulturvergleichen - je nach Thema der Ausgabe. Alle Fotos, Ton- und Videoaufnahmen wurden vom Author selbst aufgenommen, soweit keine fremde Quelle ausdrücklich vermerkt ist.

Mikio Tanaka

 
     
   


 
11. 「超弩級」から「超特急」へ

座標軸を変えた現代ドイツの看板特急ICE3
今回の取材地: ドイツ フランス 日本 スペイン ロシア


上:仏SNCF最新鋭機TGV-POSと並んだ独DBのエース機ICE3。ICE4が登場
した現在でもDBの最高性能機はこのICE3なので、独仏の両横綱の揃い踏みだ。
Oben: Die Paradepferde der DB (ICE3) und der SNCF (TGV-POS),
Schnauze neben Schnauze am Hbf Frankfurt am Main.
  真打登場である。今回はドイツの代表的高速列車、ICE(Intercity Express)の第三世代である ICE3を取り上げる。ICE3そのものは頻繁に紹介されているので、半世紀前に日独それぞれに存在した超高速鉄道計画との比較という切り口で眺めてみる事にする。
 

1 独裁者の見果てぬ夢 

日本では戦間期に東京と大阪を4時間以内、下関を9時間以内で結ぶ一部電化の広軌高速鉄道である弾丸列車計画が存在し、その際着工された新丹那トンネル等は半世紀後新幹線で有効利用されている。更に対馬海峡を海底トンネルで抜け、鮮鉄・満鉄と直通運転する案も検討されていたという。一方、ドイツではヒトラーがアーリア人主体の大帝国実現の暁にユーラシア大陸にまたがる筈の大版図を高速で結ぶ為の高速巨大鉄道の構想を有していた。



Im DB Museum in Nürnberg ist diese Konzeptzeichnung der von Hitler geplanten Breitspurbahn aus-
gestellt. Das Foto zeigt den Speisewagen, der eher einem Saal in einem Hotel ähnelt als einem Zugwagen.
Vielleicht bedarf es eines derartigen Allmachtsgefühls, um Diktator einer Großmacht werden zu können.
 ニュルンベルグのドイツ鉄道博物館に、この怪物列車の食堂車の完成予想図(上は館内の絵を撮影)がある。シャンデリア・壁灯・ステンドグラスで美々しく飾られ、中央の列のやや小ぶりの椅子をテーブルごと片付ければ舞踏会が開けそうだ。伝統ある高級ホテルのホールのような広壮さはとても列車内とは思えないが、空中楼閣で終わった。これは構想段階で第三帝国自体が滅亡した為で、結果今日まで残っている資料は少なく、筆者の知る限りAnton Joachimsthalerアントーン・ヨアヒムスターラーの"Die Breitspurbahn(広軌鉄道)"(下記はその表紙) がほぼ唯一のまとまった資料のようだ。


「ジオンの赤い彗星」をどこか連想させる不気味な隻眼の巨人機。手前の標準軌の
蒸気機関車ですら日本のマンモス機C62 より2 周りも大きいのだ。これがドイツの
北の都・ハンブルグから首都ベルリンを経て遥かカスピ海まで疾走する、筈だった。
 軌間拡大の是非は超高速鉄道の構想段階では重要な問題だ。広軌なら高出力車両を走らせ易い反面、 在来線と軌間が異なれば新・在直通運転の困難となるうえ、必要な区間だけ高速新線を造り高価な都市部 は在来線に乗入という方式が困難になり、経済性でも問題が生じる。日本では国鉄の軌間が1067mmと絶望的に狭かったので、新幹線は弾丸列車の計画時から普遍性や経済性に目を瞑ってでも広軌(といっても国際標準軌の1435mmとなったが)は必然だった。「元来ガ貧乏ナ国デアルカラ軌幅ハ狭イ方ガ宜カラウ 」という理由で英人技師モレルの狭軌案を了とした大隈重信は後年「狭軌を選択したのは一生の不覚」と後悔していたという。この規格決定の際の元佐賀藩上士の痛恨の誤判断は1世紀後の(鉄道というものが存在し続ける限り更にその後の世代も含め)日本人に莫大な余分の税負担を強い続ける事となる。


ドイツ鉄道博物館で展示されているヒットラーの巨大鉄道完成予想模型のカットモデル。左上は通路の両側に
区分室が並ぶ2等車、左下はサロン室。右:ナチ時代の高速蒸気機関車の動態保存機。流線形ボディに威圧
的なマスクで、巨人鉄道も実現していればこのように第三帝国の栄光を強調するデザインになっていただろう。
Rechts: Fahrfähig erhaltene Stromlinien-Dampflok der Baureihe 01. Ebenso wie bei der
Breitspurbahn wurde das Design auch hier für politische Zwecke eingesetzt, um die Größe
der Arier zu demonstrieren. Das Hakenkreuz am Adler wurde aus rechtlichen Gründen entfernt.

ドイツでは幸い在来線の軌間が既に1435mmと広かったのだが、上記の怪物列車構想はスケールが違う。何しろユーラシアにまたがる巨大帝国にあまねくドイツ民族の優越性と武威を示しつつ走り回らなければならないのだ。従って軌間も3000mm案から始まって、中にはZeppelin社の9000mm、つまり9m(この上を走る客車は何と4階建!!)という船のようにでかい怪物特急案まで比較検討されたという。大国の独裁者というのはここまで万能感がないと務まらないものかもしれない。日本の弾丸列車や新幹線が「超特急」ならこちらは「超弩級」、こんな化物が地響きを立て砂煙を巻き上げ時速200キロ超で突進する雄姿を見てみたかった。

 
2 欧州統合における超高速鉄道の役割

今日は日本の新幹線・ドイツのICE共に、かつての弾丸列車や怪物超広軌列車のような軍事的目的や国威発揚的役割は無く、純粋に乗客の高速輸送を第一義とするものである。ただ、現代でも日独でその役割に多少の差は残る。高度成長期に人口過密地帯で完成した日本の新幹線は大量輸送が至上命題で、普通車は横5列の詰込設計で初代0系に至っては1列車で約1600名もの定員があった。これに対してドイツその他欧州では高速鉄道ネットワークは欧州の統合に資する役割も期待される。欧州の統合という戦後の強力なベクトルはあらゆる制度に具体化されており、交通ネットワークもこの理念の外ではあり得ない。例えば欧州評議会 Council of Europe 議員会議 1987年決議第 876号* は「欧州高速鉄道網は(中略)欧州の統合を促進し、かかるネットワークの構築は(中略)欧州に大統一市場を創設する為の必須条件sine qua nonである」と明記している。



左上:パリ東駅でドイツへの折り返しを待つICE3。下:フランクフルト中央駅で
鼻先を並べる独仏の韋駄天、ICE3とTGV-POS。いずれのデザインも機能本位の
つるんとした流線形で、ナチス時代のような政治的メッセージは全く含まれていない。
Funktionalität-orientiertes Design der heutigen Hochgeschwindigkeitzüge hat keine politischen Ziele mehr.
Es gab viele Kriege zwischen Deutschland und Frankreich, aber der ICE, der in Paris eine Ruhepause
einlegt, sowie der TGV neben ICE im Frankfurter Hauptbahnhof, vermitteln ein Gefühl des Friedens.

高速鉄道の規格統一が目指されている汎欧州高速鉄道指令96/48/EEC号* 他、複数電源対応車も多数製造されている。4電源対応の ICE3 は単電源の 403系と区別して 406系と称される。ICE3 等多くの新型車の運転席は中央に据えられ、右側通行・左側通行いずれの国でも不便がないようになっている。 

 

3 ICE3 の実力

ICE初の動力分散方式(つまり日本の新幹線同様の電車方式)を採用し、加減速性能向上と共に、機関車が前位・後位いずれに付くか、つまり列車の方向次第で許容速度が異なるICE2の欠陥が克服された(両端に機関車がある初代 ICE や TGV 一族では起こり得ない問題だった)。次に、省エネ・省メンテ・省スペースに優れるVVVF可変電圧可変周波数方式を採用した。VVVF自体は最近のハイテク電車の必須アイテムで日本の新幹線も300系以降はこの方式だが、違うのは出力だ。



左上:Montabauerの待避線に停車中の僚機を対向列車運転室背後から撮影。右上:
在来線高速化用のICE4と並走するオランダ国鉄所属のICE3。連結カバーを開けると
昆虫顔になる。下:ICE3運転席脇に時速330kmの最高許容速度が表示されている。
Rechts oben: Der ICE3 der NS und der ICE4 der DB, fahren nebeneinander. Unten: Auch
nach dem Debut des ICE4, der die Lok-gespannte IC-Züge ersetzen soll, ist der ICE3 mit
einer Höchstgeschwindigkeit von 330km/h nach wie vor Deutschlands schnellster Zug.
 電動車1両あたり4個あるモーターはそれぞれ定格出力500kwとちょっとした機関車並だ (ちなみにJR東海のN700系は305kw、初代0系は185kw) が、基本編成はJR式に表現するとクモロ・サロ・モロ・サシ・サハ・モハ・サハ・クモハ (登場時) の 4M4T (8両編成中4両がモーター付の電動車) で、電動車の比率を半分にとどめ経済性にも配慮している。編成出力は500 x 4 x 4 = 8000kw、1トン当り出力 19.6kw (403系)/18.4kw (406系)という怪力は最高許容時速 330km を叩き出す為だけではなく、フランクフルト・ケルン間の高速新線 (NBS Köln-Rhein/Main) の厳しい線形をも考慮したものである。


ライン川を渡るICE3三題。左上:肌に触れそうなこの近さを現地ではhautnahという。左端
歩道橋の背後に世界遺産のケルン大聖堂が聳える。下:ライン川クルーザーとの邂逅。
Der ICE3 überquert den Rhein
  この19kw前後という1トン当り出力は、性能で劣るJR東海の700系(カモノハシ顔の新幹線)の12M4T(16両編成中12両が電動車)での18.6kw とほぼ拮抗する。一方JR西500系は16M0T即ち16両全てが電動車の為トン当たり出力は26.5kwに達し、性能的に互角の ICE3 を遥かに凌駕する。こうして見ると、最高速への寄与度という点ではMT比(モーター付の電動車と無しの付随車の比率)や重量当り出力よりも、モーターの最高出力こそがモノを言うという事か。ならばモーターを強力にする代わりに高価な電動車の比率を低く抑えるICE3方式の方が安上がりのような気が、素人ながらにする。


上:連結部を調整するエンジニア。巨大マグロに食われているようだ。
下:これで車体が黒く、油でも垂れていれば、「エイリアン
同士のキス」とでも形容したくなる、凶暴そうな二重顎だ。
Oben: Das Bild des Ingenieurs beim Einstellen der Kupplung der
ICE3 wirkt fast, als ob er von einem großen Fisch verschluckt würde.

ちなみに東海道新幹線の最終更新日(2017年8月)現在の主力N700系は14M2Tで編成出力17080kw・総重量715トンと発表されたのでトン当り出力は23.9kwとなり、やはりICE3より高スペックであるにもかかわらず最高時速はICE3に劣る。但し以上のデータはドイツ側はLeergewichtつまり空車重量、日本側は定員乗車時のものなので、ここは割り引いて比べる必要がある。世界の高速鉄道の詳細なデータ比較については多くのHPが存在するが、Website über die schnellsten Züge der Welt* が筆者の知る限り最も完成度が高くかつ更新も頻繁になされている(日本の500系と700系のデータが一部入れ替わっていたりという事も稀にあるが)。 



左上:地平まで畝り続く緑の沃野を貫く白い大動脈・高速A3号線の6車線を遥か眼下に、長い急坂
を旋回しながら一気に駆け下るダイナミックな3D運動は、最終着陸態勢に入る航空機の感覚だ。
Von der Panorama-Lounge des ICE3 kann man das Gefühl von der Führerstands-
mitfahrt genießen. Mit viele Kurven und Steigungen (um Kosten für teure Brücken
und Tunnel zu sparen) ist die Fahrt auf Hochgeschwindigkeits-Neubaustrecke
durch die Hügellandschaft des Taunus spannend wie eine Achterbahnfahrt.
 同区間南部の丘陵地帯は高価なトンネルを極力減らす為カーブや急坂が多く、中には40‰(=4%)の急坂もあり、ICE3はジェットコースター超特急Achterbahnexpreß(名付け親は私だが)ぶりを遺憾なく発揮する。後述のパノラマラウンジから眺めていると遥か眼下に高速道A3号線が見えたと思ったらあっという間に同じ平面まで降り、並んだと思った刹那、下から軽いGを感じるやA3が再び見る見る眼下で小さくなっていき恰も離陸する飛行機のように丘をぐいぐい駆け上って行くという具合だ。軍用機のtouch & go訓練みたいというのは大袈裟としても、時速 300kmの世界最速のジェットコースターという形容は過剰ではあるまい。


ICE3同士のすれ違いの前方撮影は何度か試みた。在来線区間では簡単(上)だが、高速新線での
相対速度600キロのすれ違いの瞬間の撮影に成功した事が無い(左下)。400mの重連編成が轟
音と風圧と共に駆け違う約2秒の間、筆者の乗る先頭車が対向列車の窓に映し出された(右下)。
Oben: Aufnahme des entgegenkommenden ICE3 aus einem ICE3 bei der Fahrt durch den Bahnhof
Köln-Deutz. Unten rechts: Der Steuerwagen des ICE3, in dem der Verfasser saß, spiegelt sich im
Vorbeifahren im Fenster des vorbeifahrenden ICE3 bei einer relativen Geschwindigkeit von 600 km/h.

この40‰というのは100m先で4m上がる(下がる)という急坂で、比較の為に述べると日本の新幹線は基本的に平坦地仕様で最急勾配は15‰を原則とする新幹線鉄道構造規則*15条1項)。但し北陸(長野)新幹線には30‰区間の難所があるが、これに対処する為「地形上等の為困難な場合は、列車の動力発生装置、動力伝達装置、走行装置及びブレーキ装置の性能を考慮して」35‰まで可能とする例外規定が設けられ(同条3項)、この急坂に対応できる専用車E2系を開発し、しかもこの30‰区間は減速運転と、あくまで例外的存在である。その後建設された九州新幹線にも35‰勾配があるようだ。 

 

4 ICE3 と日本との接点

車体はアルミ合金製で、シンプルなキャノピースタイルの外観は、往年の名戦闘機 F104 や JR西日本の500系にも通じる機能美を誇る。後者との類似性は当然で、ICE3 のデザイナー、南独の Neumeister 氏は500系のデザインも手がけたのである。欧州の鬼才の手になる500系が700系や300系の群れの中でユーロな異彩を放っているのも、その出自を考えれば頷ける。だが、帰国子女がその言動に細心の注意を払わないと浮き上がってしまうように、欧州の衣を纏った唯一の新幹線・500系も「走る欧州出羽守」視される宿命にあった。デビュー当時、日本の鉄道界最高の性能を誇った500系は規格の違い等から僅か9編成で生産が打切られ、登場後僅か12年後の2008年には山陽区間のみのローカル「こだま」に格下げという、佳人薄命の鉄道版のような運命を辿った。



上:模型の縮尺・配色・細かな造作の差を無視して全体の造形を比べれば、同じデザイナーの作品
である事が良くわかる。日独の両エース列車の意匠を任されるとはデザイナー冥利に尽きるだろう。
下:東海道・山陽新幹線の、というより日本の鉄路のエースだった頃のJR西500系(品川駅にて)
Die Baureihe 500 der West Japan Railway Company wurde ebenso wie der ICE3 von dem Industriedesigner
Neumeister entworfen. Das Design des Kopfes erinnert bei beiden an die Kanzel eines Kampfflugzeugs.
Die Baureihe 500 ist der einzige Shinkansen, der nicht von einem japanischen Designer entworfen wurde.

5 接客設備

では接客設備を見てみよう。まずは出入口から。



Die Türen der japanischen Hochgeschwindigkeitszüge sind Schiebetüren, daher bleibt
im geschlossenen Zustand eine Unebenheit, während die Schwenkschiebetüren der
europäischen Hochgeschwindigkeitszüge im geschlossenen Zustand vollständig glatt anliegen.

欧州車は外面の平滑化に熱心で、ICEも初代以降一貫して開戸時にドアを外に吊り出すプラグドアを採用している(左上)。この方式だと閉戸時にドアと車体は完全に面一になり、視覚的にすっきりする(下)。ただ、この高価なプラグドア方式は最近では高速列車だけでなくローカル気動車ですら用いられているので、空気抵抗軽減という実利目的だけではなく、欧州人の美意識の問題でもあるのだろう。これに対して日本では扉をスライドさせる横引き方式が乗物のドアでは新幹線から乗合バスまで広く普及し、更に民家の窓に至っては大半がこの方式なのは、襖(ふすま)の文化に馴染みがある為という気がするが、どうだろうか。また、急カーブ通過時の車端張出防止の為に両車端部が僅かに絞られているが、開戸時は階段兼用のステップがにゅっと出てくる(右上)ので不便は無い。



上:開放室と区分室をミックスした車内。車内照明に関する思想も日本と大きく異なる。
左下:急行列車名は芸術家の名を冠する事が多い(日本ではこういう発想は無い)が、編成
そのものにも愛称があり、地名が与えられる。ズュルトSyltはドイツ屈指の海岸保養地だ。
Da der ICE3 in der Übergangsphase der kontinentaleuropäischen Langstreckenzüge vom Abteilwagen
zum Großraumwagen gebaut wurde, findet sich in allen Wagen eine Mischung aus Abteilen und Großraum.

内装はドイツ人好みのシンプルな明るい色の木目がベースだ。最近の DB のインテリアの特色として、空間に遊びを持たせてある。ドイツの長距離列車の客室の車内構造は区分室Abteilwagenから開放室 Großraumwagenに移行しつつある。ICE3はその過渡期ともいえ、1等2等を問わず各車両に開放室と区分室3室を組み合わせている。2等車の区分室は従来通り定員6名だが、1等車の区分室は敢えて1席抜いて 3+2 の5人部屋として椅子の向きも工夫して向かいの乗客と足が干渉しないよう工夫されている(左上、角部屋は4名)。開放室でも中央の座席を一部削ってクロークを設置する等 (これらはICE1・2でも存在した)、定員増が至上命題の日本の鉄道とのコンセプトの違いが随所に読み取れ、乗客の輸送密度が全く違うという差を勘案しても、この余裕が羨ましい。右下:各車両数か所の窓は緊急時に備付ハンマーで割って脱出できるようになっている。この文化も日本には無い。



中:高速道路との並走区間。高速で有名なドイツのアウトバーンは実際に追越車線を200キロ前後で飛ばす
車も少なくないが、皆ICE3にゴボウ抜きにされていく。下:車掌室は無いので、車掌は検札の合間に運転室で
休憩する事がある。パネルが透過モードの時は、バンクに腰かけてスマホチェック中の様子もPLから丸見えだ。
Die Flüssigkristall-Scheibe zwischen Panarama-Lounge und Führerstand
verwandelt sich per Knopfdruck vom Führerraum aus in eine weisse Wand.
 ICE3 の車内設備の白眉は何といっても運転席直後のパノラマラウンジ(Panorama-Lounge、以下PL) だ。運転席と客席は大きなガラス一枚で隔てられているのみでカーテンは無い。ガラスには液晶が組み込んであって、運転手のボタン一つで白壁に変身する(神戸の六甲ライナーにも住吉川区間の沿線住民のプライバシー確保の見地から同様の液晶ガラスが設置されている) 。先頭車前位ドアと運転席の間の3列がPL席で、流線型車体の為前に行く程狭くなっていく感覚はB747ジャンボ機のlower deck最前部を連想させる。DBのHPから予約するとシートマップから席を選べる。


Die Ausstattung der Panarama-Lounge (PL) der DB wird zunehmend nüchterner. Im ICE3 (oben)
wurde die Beleuchtung im Fahrgastraum auf Leselampen beschränkt und dadurch verhindert,
dass das Licht in den Führerstand dringt. Zugunsten der PL hat man also sogar den Fahrgastraum
verdunkelt. Im ICE-TD (Mitte) wurde ein Halbspiegel verwendet, bei dem der Frontalblick vom wider-
spiegelnden Licht des Fahrgastraums beeinträchtigt wird. Im ICE4 wurde die PL komplett abgeschafft.
 2002年夏の NBS 開業直後は習熟運転の為運転室内は DB 従業員でぎっしり、ガラス一枚隔てたかぶり付き席もカメラやビデオを構えた鉄ちゃんでぎっしりだったが、1年後に訪れた際はもう落ち着いてPLはがらがらだった。前方が見易いよう階段状に後列程嵩上げする劇場型設計は JR 東日本の 251系や伊豆急リゾート 21等にもみられるが、これらはいずれも観光列車であり、このようなビジネス超特急に予約システムが複雑になる手間をかけてでも楽しい空間を設けてくれる遊び心が嬉しい。ICE3では夜間運転を支障しないようPLは基本的に読書灯のみで暗いが、ローカル線の高速化用ICE-TD(中、第62話参照)では室内を明るくした反面透過モードでもハーフミラーになって前方が見にくくなり、ICE4(下、開戸状態)では遂にPLは廃止され、航空機の操縦室のようになってしまった。


高品質輸送を「点と線」全体で確保する為、航空機のビジネスクラスに対抗して
1等客用のラウンジも充実している。左上上方の大きなガラスはフランクフルト
空港駅のラウンジ外観、右はフランクフルト中央駅のラウンジから見た駅構内。
Um im Wettbewerb mit der Businessklasse des Flugverkehrs mithalten zu können, wurden
an den wichtigen Bahnhöfen kostenlose Lounges für die Fahrgäste der 1. Klasse eingerichtet.

ライバルの航空機や自家用車との競争を見据えたソフト面での努力も怠りない。ICEやIC同士の接続も良いし、乗換列車の1等車・2等車がそれぞれホームの反対側に(なるべく)来るよう工夫されている。ドイツの空港は大半が町に近く便利なので(フランクフルトもデュッセルドルフも都心からタクシーでも通勤電車でも10数分の近さだ)上客であるビジネス客を取りこぼさないよう、航空機のビジネスクラスのラウンジに相当する1等客専用の無料ラウンジを主要駅に設けている。速度制限の無い区間が多く高速料金も不要なドイツでは自家用車も強力なライバルだ。しかし運転中は仕事ができないので、電源を完備し、移動中も仕事をしたい客の要望に応えている。

 

6 版図の拡大

ICE3は仏TGV (第2829話参照) と並び、交通面からの欧州統合という任務を能く遂行している。ICE3 は既にオランダ・ベルギー・スイス・フランスに直通運転を行い、オランダに輸出された ICE3 がアムステルダムCS 駅から逆にドイツに乗り入れている。次の写真はケルン中央駅における独蘭両 ICE3 の交換シーンだが、オランダ鉄道 NS 保有車も車体塗色はドイツ鉄道 DB に合わせており、鼻先の オランダ鉄道NS のロゴを見ないと判別できない。



左下:ベルギー経由でパリから到着した仏TGV-PBKA (愛称タリス) とケルン
で並ぶ ICE3。右下:フランクフルト中央駅で発車を待つパリ東駅行 ICE3。
ICE3 ist die Bezeichnung der DB für die „Velaro“-Serie der Siemens AG. Der Velaro ist ein
Verkaufsschlager-Hochgeschwindigkeitszug, der weltweit exportiert wird. Oben: ICE3 von NS
bei der Ankunft am Kölner Hbf. Links unten: Thalys (TGV-PBKA) und ICE3 Seite an Seite.

スペイン鉄道RENFEもマドリッド・バルセロナ間高速新線用の車両として伝統のムカデ列車の改良版Talgo 350と共に独ICE 3をベースにしたS103系*、通称elaro-E(E は下記 RUS との対比上エスパニョール Espanol の頭文字と思われる)も導入した。オリジナルのICE3から編成出力を更に10%増の8,800kw(8両時)に引き上げ、今度はスペインの乾いた荒野を350km/hで疾駆し始めた。 



世界に広がるICE3一族 - 左上:ICE3の中国版、CRH3。「和諧号」と漢字で大書してある点以外は
オリジナルのICE3そのままだ。この写真のみWikipediaより引用。右上:聖ペテルブルグに到着した
モスクワからのサプサンСапсан(隼)号。中・下:バルセロナ・サンツ地下駅に停車中のS103。
Der CRH3 (VR China, oben links. Quelle: Wikipedia), der Sapsan (Russland, oben rechts)
und der AVE S103 (Spanien, Mitte und unten) – allesamt Velaro der Siemens AG.

ICE3(製造元の独Siemens社での商品名はVelaro)はゲージや定員を変える等現地の事情に合わせつつその版図を更にロシアVelaro-RUS* 、モスクワ⇔聖ペテルブルグ、第50話参照)や中国CRH3*、北京⇔天津他)にも広げ、超高速鉄道の世界標準の一角の地位を不動のものにした (尚、ライバル・TGV の版図の拡大については第28・29・30話参照)。ちなみに中国のCRH2、通称「子弾頭」(北京西⇔上海、上海⇔南京他)はJR東日本の東北新幹線用E2系がベースなので、日独の駿馬が並ぶ姿が中国のどこかで見られるのかもしれない。 


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本連載の画像・音声・動画は引用注記の無い限り筆者が撮影・録音。
資料は各脱稿日現在の該当会社・団体のHP、WikipediaWebsite über die schnellsten Züge der Welt 各所掲のデータを参照したもので、それ以上の検証は行っていない。
意見にわたる箇所は全て筆者の私見である。
   
 
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