Trans Eurasien Expreß seit 2002

 
erscheint i.d.R. vierteljährlich und behandelt bedeutende und/oder interessante Eisenbahnen und sonstige Transportmittel in der Welt, mit Vergleichen zwischen Japan und dem Ausland, Geschichts- und Kulturvergleichen - je nach Thema der Ausgabe. Alle Fotos, Ton- und Videoaufnahmen wurden vom Author selbst aufgenommen, soweit keine fremde Quelle ausdrücklich vermerkt ist.

Mikio Tanaka

 
     
   


 
13. トロント・ユニオン駅に欧州を見つける I.

- ガスタービン音の記憶 -
今回の取材地:
カナダ
日本
ドイツ フランス グリーンランド


地名になった開拓民の望郷の念:カナダのロンドン、北海道の北広島

1 随所に散らばる欧州のかけら

トロントに数日立ち寄る機会があった。

トロントの中央駅に相当するユニオン駅の長距離列車の発車時刻表には「ロンドン行」等の列車が続き、用語も英仏両語表記だ。カナダ全土をカバーする鉄道会社 「VIA」 のロゴが無ければ欧州と錯覚しそうだ。付近の地図を見たらロンドン近郊の地名だけでも Uxbridge Windsor 等続々と目につく。そういえば高校時代、消え行く蒸機を追って訪れた北海道にも 「北広島」 等本州の町に由来すると思われる地名があった。祖国や内地から移住してきた開拓民の、当時は遠かっただろう故郷への想いが、地図のそこここに凝固している。
  駅のホールは天井の高い、アーチを多用した石製の欧風建築だ。壁面に旗を斜めに立てかけて並べるのも欧州の古城で良く目にする装飾方法だが、ここでも旗の放列が壁を勇壮に飾っていた。私はカナダの地理に暗く単なる推測だが、おそらく州旗だろう。ユニオンジャックやスコットランド旗が組み込んである旗も多く、先の地名同様、カナダ人のアイデンティティの中で「英国」が枢要な位置を占めている事を窺わせた。
 
 辻音楽師 第18話参照) が駅の構内でごうごうとバイオリンを弾いているのも欧州の街角と変わらない。バイオリンケースに溜まっているチップも僅かな額のコッパー (銅銭) の中に稀に銀色のコインが混じる程度で、相場も欧州と大差無いようだ。最近では日本でも時々見かけるようになったが、中にはチップ受けに千円札を予めクリップで留めて要求水準を示している者もいる。千円といえば欧米の相場のざっと20倍といったところか。日本に輸入されて日が浅い欧米文化の対価は「舶来物」の昔からインフレ化する傾向があるようだ。もっとも世の中どこかで辻褄が合っているものだ。これも、辻音楽につと耳を傾け気に入れば小銭を置いていく風習の無い国では報酬をくれる人の絶対数が少ないだろうから、その僅かな篤志家から多目に回収しないとペイしないというだけの事情なのかも知れない。


CNタワーと同展望台からから見たユニオン駅
2 カナダの名列車① アルプスから大西洋を越えてやってきたRAm

カナダの鉄道には縁が無かったが、それでもカナダといえば3つ思い浮かぶ名列車がある。まず、
Northlander。これはスイス連邦鉄道 SBB とオランダ国鉄 (当時)NS が共同開発しドイツを経由して両国やパリを結んだ、Edelweiss (エーデルヴァイス、「高貴な白」色の小花が可憐な高山植物ウスユキソウの独称。日本での通称はエーデルワイス) 号や L'Etoile du Nord (北極星) 号等の汎欧州特急TEEの運用に就いていた RAm 型と呼ばれる流線形ディーゼル機関車+中間客車2両+流線形制御客車の4両固定編成が、その陳腐化と全線電化に伴い余剰となったものを、TEE用高規格車両では珍しい内燃機関に着目したカナダのコンソーシアムが譲り受け、Ontario Northland 鉄道 (ONR) にリースされ寒冷地化改造の上、急行運用に充当されたものだ。


船のような丸窓が流行した時代の個性派ディーゼル
TEEVT11.5(左)とRAm(右)

同時代つまり1950年代末期、既にディーゼル先進国となっていたドイツでは、機関車単体では金太郎塗りのV200、編成では VT11.5 が代表選手 (ドイツではこういう旗艦的存在を 「パレード用の馬 Paradepferd」などと表現する) だが、RAmVT11.5 共に動力車には船のような丸窓が並び独特の共通した雰囲気を醸し出している。が、両者は客車の長さも違えば面構えも異なる。VT11.5 (上の写真左側) がウルトラセブンを連想させる大胆な鉄仮面をつけているのに対して、RAm (同右側) は甲殻類系とも表現できる昆虫顔 (髑髏みたいとの声もあり) が印象的だ。ONR移籍後は熱帯魚のように鮮やかに塗り分けられ、また運転室後方屋根上に北米独特のかわいらしい鐘まで取り付けられ、風貌の不気味さは視覚的に緩和された。



ONR
色に塗り替えられた RAm(左)と北米型機に交換された機関車(右)
 60年代を通じて欧州大陸を駆け回った花形ディーゼルのうち新大陸で第二の人生 (車生?) を見出したのは欧州の鉄道好きの間で人気の高い VT11.5 ではなく RAm の方だったが、カナダでは楽隠居とはいかなかった。機関車がカナダの厳冬に耐えられず故障が続発した為、GM 製の FP7 というアメリカ丸出しの機関車に代えられてしまい、機関車は北米顔、反対側の制御車は昆虫顔という欧米ハイブリッド怪編成が出来上がった。この珍列車も1992年に運用から外れ、乗る機会は永遠に無くなってしまった。 そのH0 模型が Märklin 社から出たが、製造量僅少で Göppingen のメルクリン博物館でやっと拝む事ができた。個性の強い商品は少数の熱心な愛好者を見出すが数は出ない一例だろう。車の世界でいえばシトロエン Citroën が好例だ。独創の塊のようだった60年代の DS* の頃から比べると Peugeot (これをどうやってプジョーと読ませるのか、フランス語の綴りは摩訶不思議だ) グループの傘下に入ってからすっかり毒が抜けてしまったが、平凡なデザインの現在の方が遥かに売上が好調というから DS を愛した者としては複雑だ。


カナダの例ではないが、米Union Pacific鉄道は世界最大の蒸機
Big Boy こと4000形の後釜として8500馬力を発するガスタービン機関車を投入した。その猛烈な排気と騒音から Big Blow (大吹き) と呼ばれ、自らの消費用に大きな タンク車 を連結しなければならない程の大食いだった。写真はそのH0模型(広島市交通科学館)
3 カナダの名列車② ターボトレイン

私にとってのカナダの名列車その2はターボトレインだ。その心臓部のガスタービン方式は、内燃機関では屈指の高出力を誇り、電気方式に決まる前の仏TGVの最初の試作車 TGV001* (1972年登場) の駆動方式もこれだった。このガスタービン駆動という異端の元祖 TGVTGV001 の両先頭車は静態保存され、このうち T001 号車は高速A4号線 Bischheim 出口アプローチ道脇*に何気なく置かれている。また、湾岸戦争でも活躍したアメリカ軍の M1 戦車やその派生型も同方式だ。ガスタービン列車の実用化例としては、貨物用では米国のビッグ・ブロウ (上の写真)、旅客用ではフランス国鉄 SNCF の RTG とこのカナダ国鉄 CN (当時) のターボトレインが有名だ。前者は米国 ターボライナーと称した) やイラン(投入区間に現在トランスラピッド建設計画がある)に輸出された他、現役当時はパリ北駅・Boulogne 間の英国行ホーバークラフト接続急行等のポピュラーな線の運用にも就き、しかも普通の列車に混じって全くさりげなく走っていたのでそれと気づかずに乗られた方も多いのではないだろうか。接客設備は欧州の近郊列車に毛の生えた程度ながら、機関室の中身が違った。



オンタリオ湖。遥か対岸の画面左側は米国ニューヨーク州最西端部となる。

  学生の頃、このブーローニュ行ガスタービン列車 RTG+ホーバークラフトという乗物好きには堪らない揃い踏みを試したいばかりに、用もなくロンドンに行った事がある。実家の隅で埃を被っていたタイムカプセルのような昔のダンボール箱の中を掘り返したらパリ北駅で録音した当時のテープが出てきたので、ファイルを2つに分けてMP3化した。最初のファイルはアイドリングというには勇ましすぎるガスタービンエンジンの咆哮*、2つ目は RTGGare du Nord 発車音* だ。冒頭で流れる仏英二ヶ国語の「ホーバークラフト経由・ロンドンチャリングクロス行接続・ブーローニュ行、発車します」というややこしいアナウンスなど、ユーロスター* (第29話参照) でロンパリが直結された現在、二度と聞く事はできない。


Boulogne
に到着した RTG (80年代半ば)
  80年代、パリ北駅発車時に RTG のジェット機さながらの金属音を聞いた時、瞬時に「これは アンダーバッド急行* だ」と感じた。Anderbad (スイスの架空の地名。今思えばゴッタルド・フルカ両峠に近いスイスの保養地 Andermatt と悪 bad をひっかけたのだろう) 急行というのは60年代の不朽の名作サンダーバードに出てくる、悪者に命をつけ狙われるペネロープ (英語版での発音はぺロピー) がパリから Anderbad に移動する際に個室に乗車した懸垂式高速モノレールで、スイスの山々に美しくこだまする独特の警笛音は今も鮮明に覚えているが、その走行シーンにはガスタービンの効果音が使われていた。但し、超音速旅客機ファイアーフラッシュ号と全く同じ効果音だったので「あ、ズルしてる」と思ったものだが、これも今思い返すとサンダーバードに登場した高速の乗物や高出力の機械にはよく同じ効果音が使われていた。ガスタービンは、60年代の少年達をわくわくさせた未来技術だった。


各国のガスタービン列車の出発信号機が全て赤になってしまったのは残念だ。
  日本でも旧国鉄がキハ391というガスタービン列車を試作したが、沿線住民にとっては毎日がサンダーバードでは堪らない。ガスタービン列車は、線路際まで民家が迫る日本では存在し得ない列車だった。騒音に加え燃費の悪さが致命傷になってオイルショック後長く顧みられる事はなくなり、日本では遂に実用化には至らず、仏RTGも車齢が尽きると共に廃車となり後が続かなかった。ドイツでも前出 VT11.5 (後VT601と改番) の一部をガスタービンエンジンに換装した VT602 が試作されたが、節約心旺盛 sparsam なドイツ人に根付く筈もなく、暫くは片側のみガスタービン機関車・反対側の機関車はディーゼル駆動のまま的苦しい運用で凌いでいた。


ガスタービン機に改造後のVT602運転室左窓から前方ボンネットを見る。
巨大なエアインテーク(①)が付加され、中央排煙塔(②)も鋭角的になり、いかめしくなった。
(ニュルンベルグDB博物館別館)
  この、アルミ製ではあるがリベットの露出した旧式ボディとガスタービンエンジンとを組み合わせた恐らく世界唯一の珍機関車は現在 Nürnberg の交通博物館に保存されている。広大な機関室に鎮座ましましているガスタービンエンジンの小ささは驚くばかりだ。両端共にガスタービン機関車+客車10両での設計速度は200キロ (実際の営業運転では160キロ、ディーゼル機関車との組み合わせでは140キロ) だったというから、この小さなエンジン1基で客車5両を時速200キロで走らせる事ができる計算だ。小型強力なのも道理で、これはヘリコプター用のエンジンを手直ししたものだという。逆に言うと、あのトンボのような小さな機体を翼の揚力の助けも借りずに重力に逆らい自在に飛ばす為には、客車5両を時速200キロで引っ張り回せるだけの力が必要だという事になる。


VT602
の広大な機関室を占拠していた巨大なディーゼルエンジンは、
ヘリ用の小さなガスタービンエンジンにちょこんと換装された。
 カナダの ターボトレイン* も似た運命を辿った。United Aircraft and Transport Corporation 社製造にかかるターボトレインは1968年から1982年まで主にトロント・モントリオール間の急行運用に就いた。設計時速200キロ・車体傾斜装置付きという意欲作だったが、性能が安定せず実際の営業最高速度は時速160キロで運転される事が多く、82年に LRC という凡庸だが性能の安定した電気式ディーゼル機関車牽引の軽量客車列車に取って代わられてしまった。ターボトレインは、今日ACELA 第30話参照) が走っているボストン~ニューヨーク~ワシントンを含む米国の数区間でも実用化されたが、惜しい事に一両も現存しない。
  尚、カナダでの長距離鉄道輸送を担う VIAHP*によると「大西洋から太平洋まで、五大湖からハドソン湾まで」カバーするVIA全線の年間輸送人員は390万人との事だが、東京メトロ* でいえば平成16年度乗降客数同社内順位全126駅中第121位の丸の内線方南支線中野富士見町駅一駅の利用者数に大体相当する。998万平方キロ(日本の26倍)にも及ぶ広大で自然条件の厳しい国土を走り回って中野富士見町サイズの小駅一駅分の乗客では、運賃収入だけで膨大な鉄道インフラを維持するのは不可能だろう。ターボトレインのような大喰い列車を飼っておく余裕は、確かに無かったと思われる。


ガスタービン駆動+タルゴ風一軸連接台車+振子機能+60年代的モダニズムの超意欲作。
ニューヨーク地下駅乗入バージョンは第三軌条による集電機能まで備えていたというから、
鉄道界のシトロエンDSとでも形容すべき超ユニーク車だ。
 かように大筋では仏・加のガスタービン列車は似た運命を辿ったと総括できるが、ターボトレインが RTG と比べて鮮やかに違うのは、その未来的デザインにあった。ドーバー海峡から西の英米の鉄道はなぜか垢抜けないデザインの為カメラを向ける気も起きないものが多い。蒸気機関車全盛時の英国機は意匠にも工夫を凝らしたものが多かったのに、無煙化後のデザインは違和感を覚えるものが多いが、カナダのターボトレインはその明白な例外の一つだ。地を這う航空機とでも形容すべき意匠・高運転台と一体化したハイデッキ室 (ターボドームと称した)・シンプルで未来的なカラリング (CNオリジナル塗装当時) が破綻無く組み合わされ、エクステリアの美しさはどんなに筆を舞わしても舞わし足りない。


見る角度によっては船のようにも犬の鼻先のようにも見える不思議なデザインだ。
機関室の真上にありガスタービン音がBGMのターボドームは、
鉄道会社によってはラウンジとして開放したようだ。鉄道愛好家には至福の空間だったろう。
 

しかし省燃費秘術の向上と共に、非電化区間の高速化の切り札としてガスタービン方式を見直そうという動きも出てきた。例えば非電化路線の多い米国やカナダでの実用化を目指して Bombardier 社が Acela 用機関車に酷似したデザインの Jet Train* と称するガスタービン機関車を開発中だ。交流モーターと蓄電機能を持つフライホイールを組み合わせる事で、特に低速域での悪燃費という致命的欠陥の克服を目指すというので期待が持てる。今一度、ガスタービンエンジンの咆哮を聞きたいものだ。

本号作成に際しては、Wikipedia や各社HPに加えて、ガスタービン鉄道を総合的・専 門的に解説した ターボトレインのサイト*を参考にした。

 
     
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資料は各脱稿日現在の該当会社・団体のHP、WikipediaWebsite über die schnellsten Züge der Welt 各所掲のデータを参照したもので、それ以上の検証は行っていない。
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