Trans Eurasien Expreß seit 2002

 
erscheint i.d.R. vierteljährlich und behandelt bedeutende und/oder interessante Eisenbahnen und sonstige Transportmittel in der Welt, mit Vergleichen zwischen Japan und dem Ausland, Geschichts- und Kulturvergleichen - je nach Thema der Ausgabe. Alle Fotos, Ton- und Videoaufnahmen wurden vom Author selbst aufgenommen, soweit keine fremde Quelle ausdrücklich vermerkt ist.

Mikio Tanaka

 
     
   


 
14. トロント・ユニオン駅に欧州を見つける II.

- GO Train で GO! -
今回の取材地:
カナダ
日本
4 カナダの名列車③ GO Train 

私の考えるカナダの鉄道の白眉の3つ目は GO Train だ。これは近郊バス網と一体化した GO Transit* というトロントの近郊輸送システムの一環の列車群で、郊外からの通勤客の着席輸送の機能を果たしている。地下鉄は別にすれば、鉄道とは通勤用でも座って移動するものという基本コンセプトは欧州 (南欧・東欧の一部を除く) 伝来のものだ。
  GO列車の30周年記念3両セットをカナダの模型屋から日本出発直前にネットで買い、配送先をトロントで宿泊予定の宿とした。空港からのタクシーを降りるのももどかしく宿にチェックインしたが渡されたのはカードキーのみ。あれ、これだけ?"Oh, there is a package for you, Sir!" そう来なくっちゃ。部屋でうちの新入君とおもむろにご対面。米国の模型メーカーの製品は初めてだったが N ゲージにしてはなかなかの美形である。
  路線系統の知識も時間もないので有人窓口で「行先はどこでもいいから最も先発の列車を一駅だけ」と注文したら怪訝そうな顔をしながらGOのロゴ入りの切符を売ってくれた。ホームには欧州の古い頭端駅のような高天井の立派なドームは無く長大な厩舎といった感じだが、機関車の停車位置の天井は切り掻かれ大量の排ガスを逃がしている。どの機関車も憎々しげに巨大なディーゼルでアイドリングの音圧も大きく、傍まで行くと恐怖すら覚える。最近の北米型のディーゼル機関車はちょっとした工場のように凸凹しており、流れるようなユーロデザインとは対極を成している。特にラジエーターを思い切って張り出させたGE製のDASH-9型に至ってはこれはこれでメカの造形美の一つの極致だ。


前号でご紹介したBig Blowもそうだが、北米型機関車の醍醐味はその「動く工場」のような
無骨さと巨大さにある。なかでもこのDASH-9は、ここまで凸凹させれば見事と言う他ない。
 カラン・・カラン・・と牧歌的な鐘の音と共に長大な GO 列車が進入してきた。横から見ると八角形の独特のオクタゴンデザインの巨大な客車が延々と数珠のように繋がっているのは壮観だ。前位に制御客車が立ち、機関車が最後部から推進していた。


2階席に湾曲の無い窓が並ぶ絶壁のような側壁が、北米規格の車両限界の大きさを物語る。
  制御客車の先頭形状が殆ど中間客車と変わらないのは北米型の特色で、これとは対照的に欧州の制御客車は近郊客車でも半流線型になり、先頭車である事を強調する塗色をし、一目でそれとわかる。但しドイツの近郊客車の標準だった通称ズィルバーリンゲ Silberlinge (銀坊主) も初期の制御客車の側面は中間客車と区別が困難だった。
  車内は新幹線並の車幅に 2+2 のゆったりした固定式クロスシートで、座席はやや硬いが通勤用としては上出来だ。下の階は着座面が跳ね上がるようになっており、自転車も収納できる。この「自転車利用可」というところにも欧州の遺伝子を感じる。


台車上に乗降扉がある日本の2階建車両と異なり、北米型2階建車両では下層階に
ドアがある(欧州大陸では両パターンがある)ので二階席への階段は9段もある。
(JR東日本の標準的な二階建車両の階段はデッキの上下方向に5段+5段)
 車内を観察していたら窓から見える構内の景色がゆっくり流れ出した。機関車の直前のコーチに乗ったので、くぐもったエンジン音のみならず僅かに振動まで伝わってくる。ドロロロロロ・・と回転音が一段と上がり、この長大でリベット打ちの如何にも重そうな総二階建て列車が、後ろから凶暴な力で前へ前へと押し出されていくのが体感される。
 長く暗いホームを抜けると一旦絶気し、ブルン・ブルン・ブルン・・のアイドリング音のまま多くの分岐をゆらゆらと通過。一頻り渡り終えると再び回転音が威勢良くバロロロロ!と上昇し、加速を再開した。出港する船の感覚だった。阪急西宮北口駅にあった平面交差が大好きだった筆者はGO路線にも平面交差がある事を把握していたが、時間が無く後ろ髪を引かれる思いで僅か一駅で引き返した。
 HP によると GO Transit は1967年に発足、運営主体はオンタリオ州運輸省直轄の拡大トロント交通局 GTTA、バス網も含めて年4500万人を運ぶという。年4500万と聞くと一見多いようだが、これも東京メトロとの比較でいえば平成16年度乗降客数同社内順位第15位の九段下駅一駅の利用者数よりも少ない数字なのだ。
 カナダ最大の都市の通勤輸送とはいえ需要の絶対量が比較的少なく、従って広告収入も余り期待できない (マックのラッピング広告車は見かけたが車内広告は妻面に僅かにあるだけだった) ところでどうやってコストのかかる着席通勤輸送を実現するのか、HP を見ただけでは資金面の仕組みは分からないが、このゆったりした輸送環境で支出の8~9割を運賃収入で賄っているという。ここでいう「支出」の定義は明らかではないが、それでも大したものだ。
 ダイヤを見ると日中や週末の本数は激減し、通勤着席輸送というコンセプトに焦点を絞っている事、また全線非電化のまま・平面交差すらありという設備投資の抑制、駅員は殆ど目につかない徹底した合理化 (がらんとした駅の印象も欧州的だ)、30年以上前の登場時の客車が塗色スキームすらそのまま使われている事、と徹底した「選択と集中」の経営方針が見て取れる。これはインフラ建設にかかわる業界等には全く旨味の少ない方式だが、納税者への負担は最小限に留められるやり方だ。言い換えれば仲間内の部分利益より一般大衆の利益を優先する哲学が支配しており、これもデモクラシーの本場・欧州直伝だ。


良く見るとマックのラッピング広告の中央にメイプルリーフが描かれている。
祖国を愛し、マックも愛するというメッセージのようだ。
5 その他の乗物駆け足観察雑感

ユニオン駅に戻ると長距離列車ホームに VIA の急行が入線していたので見に行きたかったのだが、切符を提示しないとホームに入れないシステムの為未遂に終わった。これは英国式で、こんなところにも建国の歴史を感じる。


東急7000形顔の顔合わせと編成中央にある車掌コーナー。客室との間に壁も無い。
 トロント地下鉄の車両の顔は東急7000系そっくりだった。確か7000系は米 Budd 社よりライセンス供与を受けた車だったと記憶するので、同東急車の方が北米顔だと言った方が正確か。ただ編成中央に陣取る車掌室の位置や車内の座席配置は日欧では見かけないものだ。
 地下鉄末端区間には都営大江戸線のような小断面のレール式リニアモーターの区間も存在する。大半が平坦な地平区間なのであえて直通のできない別方式とする必然性は乏しいように思われた。沿線の樹木は倒壊して運行に支障を及ぼしかねないので伐採されがちだが、敢えて両側並木を植えているところにも都市計画で並木を重視する欧州の遺伝子を感じる。20年後には見事な緑のトンネルが出来上がるだろう。


第三軌条とリニア推進用リアクションプレートと並木と。
 トロント近辺の乗物系観光ガイドも付記する。まず市内では Hippo Tours* が面白い。水陸両用バスでまず市内をぐるりと一回りした後、五大湖の一つオンタリオ湖にそのままざぶんと入り <動画参照>、しばらく湖上遊覧した後再び陸に上がってユニオン駅近くの出発地に戻る、小一時間の手軽なアトラクションだ。



陸に上がった「河馬」(左上)と水上走行の図(右上)。水陸二重の駆動系は重いと見え、喫水線が高い。
 日本でも水陸両用バスによるダックツアーと称される観光運行が今世紀に入って大阪等各地で始まった。カナダでは入水時の様子を外部から撮影する機会が無かったので、トロントと愛称が同じ (hippo = hippopotamus = カバ) 山中湖の KABA* の入水の連続写真も添付する。ざっと見た限りでは、カナダのものと比べてホイールアーチが無く小さな車輪が取って付けた印象である事と、陸上と水上で運転者が交代するのでガイドも含め3名も乗務している点が違いとして目立った。前面窓が水をかぶるほど威勢よく飛び込むカナダの hippo と比べると、日本のは最徐行でそろそろと入水する大人しいカバさんだ。
 用事が終わってから有志でミニバスを借りてナイアガラとワイナリーを見学、その足でトロント空港でポロント落として貰う事とした。ナイアガラ* の滝壺まで接近する霧の乙女号 Maiden of the Mist は有名なだけあって楽しいが、滝の真下では霧で何も見えず、冷たいシャワーが間断無く降り注ぎ息苦しい程だった。 動画参照回路を駄目にしないようにデジカメを包んだタオルが忽ちびしょ濡れになり撮影どころではなくなってしまった。滝壺から少し離れた渦を中吊りで移動しながら眺める Spanish Aero Car* というのもある。


右の写真右上の展望台の人の小ささが滝の巨大さを実感させる。
大瀑布を滝壺から見上げる
Maiden of the Mist 号は must だが、
滝壺付近は文字通り霧が深く冷たいので息苦しい程だ。
 「米国方面左折」のように国境が身近に感じられる交通標識は、国境が県境的感覚になりつつある欧州大陸に一脈通じるものがある。右側通行にかかわらず幹線道路に漂っていたのは British flavour だった。王冠マーク内に書かれた「QEW」の道路標識が良く出てくるのでありゃ何だいと尋ねたら Queen Elisabeth Way の略だという。British Commonwealth のコンセプトに由来するのだろうが、ここでもまた大西洋の遥か対岸の英国の存在の大きさを見た。
 次に漂ってきたのは大陸・ドイツの薫りだった。訪ねたワイナリーでの試飲での目玉はドイツ原産種の Riesling と貴腐酒だった。猿並みの味覚しかない私にはワイン試飲 Weinprobe もヘチマも無いが、ドイツワイン独特の果実風味が強く少しつんつんするfruchtig und spritzig という) Riesling の味だけは覚えていた。また貴腐酒 Eiswein はドイツという先入観があったので、ice wine というまんま直訳の商品がこの一帯の名産という説明を受け、地球面の広さを思った。
 視覚的には一面の Riesling の葡萄畑、聴覚的には聞こえてくる会話の多くがドイツ語 (この時の同行者の過半がドイツ語圏の人間だった) という環境で、これで嗅覚的にも背後のレストランから焼きソーセージ Bratwurst の匂いでも漂ってきたら、もうここは飛び地のドイツ領だ。Oder?
 次号は貴腐酒の本場ドイツの葡萄畑の中、悠久のライン川に沿って走る、DBドイツ鉄道の一情景をお届けする。
 
     
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本連載の画像・音声・動画は引用注記の無い限り筆者が撮影・録音。
資料は各脱稿日現在の該当会社・団体のHP、WikipediaWebsite über die schnellsten Züge der Welt 各所掲のデータを参照したもので、それ以上の検証は行っていない。
意見にわたる箇所は全て筆者の私見である。
   
 
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