Trans Eurasien Expreß seit 2002

 
erscheint z.Zt. vierteljährlich und behandelt bedeutende und/oder interessante Eisenbahnen und sonstige Transportmittel in der Welt, mit Vergleichen zwischen Japan und dem Ausland, Geschichts- und Kulturvergleichen - je nach Thema der Ausgabe. Alle Fotos, Ton- und Videoaufnahmen wurden vom Author selbst aufgenommen, soweit keine fremde Quelle ausdrücklich vermerkt ist.

Mikio Tanaka

 
     
   


 
2.磁場の女王と共にエムスランドの沃野の超低空を切り裂く II
- トランスラピッドのライバル:日本のリニアと大陸欧州の在来型高速鉄道 -

Mitschweben auf den Magnetschwebebahnen II – Yamanashi und Aichi
今回の取材地: スウェーデン アメリカ


大仕掛けな凹型軌道の底に浮かぶ MLX01-901(上・下)と、華奢な平面軌道を
抱き込んで滑空するTR08(中)。日独方式の差は視覚的にも大きい。
Anders als der Transrapid mit normalleitenden Magneten (Spaltabstand: 8mm,
unten) sind die Anlagen bei der Magnetschwebebahn im Erdbebenland Japan, die
supraleitende Magneten verwendet (Spaltabstand: 10cm), extrem aufwändig (oben)
3 日独リニアの比較

常電導磁石を用いたドイツのトランスラピッド (以下 「TR」、第1話 参照) と異なり、超電導磁石を用いる JR リニアは大仕掛けだが速い。TR05 以来一貫してパノラミックな大窓を持つTR とは対照的に、これまでの日本の試作車は一貫して小窓だ。2005年の愛知万博 (愛・地球博) で展示された MLX01 に至ってはコンコルドのような小窓がぽつぽつと並ぶ。これは軽量化の為と、日本における建設予定区間の大半がトンネルになる事が予想されている為だろう。



JR東海超電導リニア館*の 超電導式 MLX01 展示車両の背後を
常電導の HSST 方式のリニモが行く。日の丸リニアの競演だ。
Der an den Schnabel eines Wasservogels erinnernde Kopfwagen MLX01 ausgestellt auf der
Aichi Expo 2005 (vorne) und die Magnetschwebe-S-Bahn "Linimo" im Betrieb seit 2005 (hinten) .

しかし、日の丸リニアが将来外国での受注も目指すなら TR というライバルがいる事を忘れてはならない 。ドイツからTRの技術移転を受けた中国 (既にレール式超高速鉄道では日独を始め諸外国の技術を導入して世界最長のネットワークを築いている) も強力なライバルになるだろう。性能のみならず接客設備面の快適さも重要で、その点小窓による圧迫感は不利ではないか。TR の広々とした大窓から時速430キロで流れるエムスランドの森や上海のビル群はSF映画のような爽快さで、乗客に何度でも乗りたいと思わせるのは必定だ。



超電導方式を用いる JR 東海の凹形ガイドウェイの側壁には、零下269度の液化ヘリウムが循環す
る超電導コイルがびっしり並ぶ。左の写真の角度からは、車体から張り出した車載コイルが良く見える。
In den Seitenwänden des U-förmigen Fahrwegs befinden sich dicht aneinandergereihte supra-
leitende Spulen, die von minus 269 Grad-kaltem flüssigem Helium gekühlt werden. Aus dem
Winkel des linken Fotos sind die aus dem Fahrzeug ragenden Magnetspulen gut zu erkennen

世界をリードする日独両国の磁気浮上列車をもう少し比べてみよう。JR が中央新幹線を念頭に開発中のマグレブ (註1) 列車も独 TR も共に制御コイルを軌道側に置くいわゆる地上一次方式を採用する。しかし JR は凹形断面の樋型軌道内に半身を沈めた車体を超電導の電磁誘導方式で左右から吊り上げる方式 (約10センチ浮上)、TR はT字型軌道断面を逆 「臼」 字型断面の車体がかかえこみ常電導で軌道下の車体底部を吸い寄せて浮かせる電磁吸引支持方式 (約8ミリ~1センチ浮上) を採用する。第1話*の扁平でシンプルな TR の軌道と比較して戴きたい。

 
(註1) magnetic levitation、磁気浮上の略。北西アフリカ諸国の総称の Maghreb と区別する為にカタカナ表記はマグレヴの方が良いのではないか。


名古屋方は超ロングノーズ(上)、東京方はダブルカスプ型(下)と称し
試乗車両端の顔が異なる。量産車L0系は前者がベースとなった。
Komplett verschiedene Kopfdesigns: Im Unterschied zum Transrapid, dessen Design-
konzept seit dem TR05 fast kaum verändert wurde, hat JR in Japan aufgrund der leid-
vollen Erfahrungen mit Lärmprozessen im Zusammenhang mit dem Shinkansen das
Design weiter entwickelt, um die Windgeräusche weiter zu reduzieren.

日本方式では低速時はタイヤで重力を支えるので、素人目にも安心感がある。車輪が加速時に軌道を離れる瞬間と減速時に接地する瞬間の音と感覚も飛行機の離着陸に似ている。車輪・客席間の距離が航空機の場合より遥かに近い事もあり、加速と共に小型タイヤ特有のせわしい回転音が音階と共に急上昇していき、擬音的表現を試みるとゴロゴロゴロゴロロロロロロロロロロロロロロロロッ!・・・と時速120キロ辺りだったかで「テイクオフ」する瞬間がはっきり体感でき、浮上後も暫く車輪が惰性で高速回転する音が聞こえる。浮きっ放しのドイツ方式 (こちらは助走無しで磁力で垂直に浮かせるのでリフトオフと言うべきか) とは明らかに感覚が異なり、日独それぞれに趣がある。



Das Design des Kopfwagens der Baureihe L0 des ChuoLinear Shinkansen, der 2027 in
Betrieb genommen werden soll, beruht auf dem Modell der extrem langen Nase (links oben)

ThyssenKrupp 社の工場の敷地内でゆるゆると走っていた3代前の試作車 TR05 の時代からデザインコンセプトがほぼ不変のトランスラピッドとは対照的に、新幹線の騒音問題で悩まされたJRは空力デザインの選定に慎重で、山梨実験線用に 1996年に新製した試作車MLX01には、全く顔の違う先頭車を用意した。東京寄りはダブルカスプ (二重三日月) 形と称し、三日月型アーチがS字状に連続する、水鳥の嘴のような形をしている。反対側の名古屋 寄りはエアロウェッジ (空気の楔) 形と称する超ロングノーズで鼻先がバッサリ切り落とされた、完全な楔形でもない異形だ。いずれもノッペラボウで運転席が無いのは自動運転だからだ (TRも自動運転だがは運転席(機能的にはモニター室か)のガラス越しに乗客も前方の景色が楽しめる)。2027年開業予定の JR 東海・中央新幹線の東名区間での量産先行車 L0 系は超ロングノーズの方がベースになったが、車内空間を稼ぐ為に断面が四角くなったので更に不思議な形状になった。



Auch die Weichensysteme unterscheiden sich stark in Japan und in Deutschland.

細いレール2本で進路を固定できるレール式鉄道と違って、マグレブでは軌道にも磁石が埋め込んであるので、分岐は容易では無い。写真上は日本 (JR) 方式、下はドイツ (トランスラピッド) 方式だが軌道が相対的に大仕掛けな分だけ日本方式の方が見応えがあり、巨大な分岐器が動く様子の BGM には勇壮なサンダーバードの音楽が相応しい。ドイツ方式 (写真は上海・竜陽路駅手前の分岐) では渡り線の部分だけ置き石のように予め軌道を固定しておき、分岐時は両側の本線から渡り線に向かって軌道がしなって渡り線の両端に繋がる仕掛けになっている。



Im Gegensatz zum "normalen Einsteigen" in den Transrapid (unten) kommt man
sich beim Einsteigen in die Magnetschwebebahn der JR wie beim Boarding
in ein Flugzeug vor (oben). Die Fahrzeugtüren öffnen sich nach oben.

乗降方式も日独でかなり異なる。SF 映画のような密閉・伸縮式の搭乗橋を通るJRリニア (上列右3葉) は、飛行機の搭乗のような感覚だ。上列右から2枚目 (窓ガラス斜め越し撮影なので画質の悪さはご容赦戴きたい) は MLX01 の丸い車体断面に合わせた形状の搭乗橋が張り出した様子だが、車体断面が四角い L0 系にはこのままで使えるとは思えず、車両のモデルチェンジのたびに駅側も調整工事の必要がありそうだ。これに対してドイツ方式は写真下 (上海浦東空港駅) のように普通の電車の乗降と変わらない。そもそも TVE 見学センター Besucherzentrum 駅 (左上) のシンプルさをご覧戴きたい。



唸りと粉塵をあげて超高速に挑むJRマグレブ。雨天時の水煙は壮観だろう。
Brummend rast der Testzug MLX01 über die Eisenbahnbrücke in Tsuru

超電導磁石冷却用に液化ヘリウムを用いる日本方式の方が TR の軌道より複雑で、使われるコンクリートの量も JR リニア > JR 新幹線 > TR という印象だ。この舞台装置の大小はそのまま性能の差にも反映されている。即ち、最高営業速度430キロの TR に比べ、JR マグレブは営業最高速度は 500 キロ、高速試験では2015年4月21日に時速 603 キロをマークしている。



上:JRリニア(左)とトランスラピッド(右)それぞれの車速ディスプレイ。JRの方は車載カメラ
からの前面展望が放映されていた。中:現時速と起点からの距離を表示中。時速502キロは
秒速140mだ。7秒強毎に1キロずつ進んでいくsurface transportを他に知らない。
下:山梨県リニア見学センターからは重畳と連なる甲斐の山々が見渡せる。
Die maximale Geschwindigkeit der JR Magnetschwebebahn (links) bei der Testfahrt
beträgt 603km/h, die Betriebshöchstgeschwindigkeit liegt bei 500km/h, d.h. 70km/h
schneller als die 430km/h des Transrapid (rechts). Da die Fenster klein sind und im
gebirgigen Japan der Zug häufig durch Tunnel fährt, ist im Wagen ein Bildschirm in-
stalliert, der die Aufnahmen einer im Kopfteil des Zuges eingebauten Kamera zeigt.

ThyssenKrupp、Siemens、ドイツ政府、ドイツ鉄道株式会社が出資するトランスラピッド・インターナツィオナール有限合資会社 Transrapid International GmbH & Co. KG の HP では、その FAQ* の中で日独方式の優劣を論じている。これによると、ドイツ方式は全ての方式を比較検討した結果現在の方式に行き着いたものであり、とりわけ ① コスト ② 磁場が乗客に与える影響 ③ 客室の快適さ、の各点においてドイツ方式が日本方式に勝り、反面日本方式の優位は高い耐震性能のみを挙げており、性能差には触れられていない。地震 (註2) の無い国ではドイツ方式が優れている、と暗に結論付けているように読める。

 
(註2) 危惧されている次の東海地震では最悪の場合、海岸線や浜岡原発の近くを走る日本の大動脈、東海道新幹線が長期間打撃を受けかねない。小田原評定を待たず、JR 東海が2007年に中央リニア新幹線を自力で建設すると決めたのは日本の為にも英断だったと言えるだろう。


車載・軌道双方のコイルが見える。とてもマグネティックは景観だ。もし磁場が光を
発するものなら、磁場が強いであろうこの一帯はどんな輝きを見せるだろうか。
Die Spulen am Fahrzeug und am Fahrweg – ein sehr magnetischer Anblick!
Wenn Magnetfelder Licht erzeugen würden, wie strahlend hell wäre es
wohl um diesen Zug, an dem ein sehr hohes Magnetfeld sein dürfte?

耐震性のみならず、非常時の安全確保に関しても日本の方が慎重だ。TR に似た車両・軌道構造を有するリニモは、理論上は TR 同様の避難路の無いシンプルな軌道にする事ができた筈だ。しかしこれでは非常時に乗客が軌道に降りて避難する事はできず、脱出シュート* で降りる以外に途は無い。軌道上を非常時の脱出経路とは考えないモノレールのように割り切るかどうかだが、TR は割り切り、リニモは割り切れなかったという事のようだ。JR もまた割り切れなかったようでコンクリート製の側壁間の溝が避難路兼保守用通路になっている。



最高時速100キロのリニモはドイツのTR同様の常電導吸引方式を用いており軌道
自体はシンプルだが、避難路も確保してあるのでTRより軌道のコンクリートが目立つ。
Linimo, eine Pendler-S-Bahn mit einer Höchstgeschwindigkeit von
100km/h verwendet ebenso wie der Transrapid von normalleitenden
Magneten angezogen.Anders als beim Transrapid ist jedoch der Stator
des Linearmotors im Fahrzeug und nicht in der Trasse eingebaut.

日本は在来線の軌間が狭く低速である点がリニア方式に有利に働いている点もある。日本では高速鉄道 (新幹線) は全区間軌道を新設しなければならないのでリニア建設との価格差がドイツよりも小さい。しかも JR リニアは 500km/h と高速なのでレール式とのスピード差はドイツよりも大きい。結局リニア建設の費用対効果はこれらの点では日本の方がドイツより大きいといえそうだ。大隈重信は明治維新政府で民部大蔵大輔だった頃、「日本の国力では狭軌鉄道で十分」 との英国人技師モレル Edmund Morel の進言を容れた事を生涯の失敗だったと悔やんだという。だが、以下に述べるようにレールの上を走る在来型高速鉄道が普及した今日のドイツにおけるリニア導入の困難を見ると、この大隈重信の狭軌導入の判断こそが日本のリニア建設を後押しする遠因となったとも言え、人生万事塞翁が馬というか何が幸するかわからない。

4 高速化著しい大陸欧州の在来鉄道

TR のお膝元・欧州での最大のライバルは、高速化著しい地元の既存鉄道だろう。旧来のレール方式でも高速新線 (独:NBS = Neubaustrecke、仏:LGV = Ligne à Grande Vitesse) では時速300キロはもはや標準で、時速350キロ運転も視野に入っている。フランス国鉄 SNCF の TGV第28話参照) 2代目 TGV-A 型は1990年5月18日の高速試験で時速515.3キロというレール式鉄道の圧倒的世界記録を打ち立てた。 この unbeatable に思われた記録も、同じ SNCF の手によってあっさり塗り替えられた。1000kw モーターで電動化した TGV Duplex 用の二階建連接客車3両の両端を TGV-Est 用機関車 (1960kw×8基) で挟んだ高試特別編成 TGV-V150 が、2007年4 月3日に 574.8 km/h をマークしたのだ。その時の模様の 動画* も公開されている。第28話参照) 空撮も意識し屋根上に長大な吹流し状の三色旗を描き、超高速列車の輸出促進の為の如何にもフランスらしい演出だ。既存インフラと互換性のない磁気浮上型リニア鉄道は、こういう在来鉄道の化物も相手にしなければならないのだ。安価な既存方式で日独のリニアの予想営業最高速度を遥かに抜き去る速度を達成した SNCF の偉業は、超高速リニアに対する深刻な脅威だろう。



515.3km・574.8kmという、当時のレール式鉄道世界記録(後者は現在も破られて
いない)を達成したTGV-A(左上)とTGV-V150(右上・下)、それぞれのH0模型
Harte Rivalen: SNCF und Alstrom haben bewiesen, dass auch bei Zügen auf
konventionellen Schieneneisenbahnen hohe Geschwindigkeiten möglich sind.
H0 Modelle des TGV-A (links oben), der 1990 515,3km/h erreichte und des
TGV-V150 (rechts oben und unten), der 2007 574,8 km/h erreichte.

在来線も十分速くなった。既に在来急行は時速200キロは当たり前で、ドイツ鉄道DBはこれらを更に高速化する為、最高時速230~250 キロのICE4の投入を開始した。隣国ではオーストリア連邦鉄道 ÖBB の在来線高速化の切り札タウルス Taurus 3型電気機関車 (註3) は2006年9月2日、殆ど無改造 (計測車1両牽引) の条件で実施した高速試験で時速357キロを叩き出した。オーストリア機のテストをドイツで行い、フランスからはそれまでの在来線機関車世界最高速記録を保持する仏 SNCF の BB9004 と CC7107* (共に1955年に時速331キロをマーク) がミュールーズの鉄道博物館を抜け出してタウルスの応援に駆けつけたというクロスボーダーな演出も、いかにも欧州らしくて良い)。

 
(註3) Taurus は独 Siemens 社製の Euro Sprinter シリーズのオーストリア版だ。Euro Sprinter はモジュール化によるコスト低減と高加速力が特色で、独・墺・洪・スイス・ポーランド・韓国等、多くの国で派生形が活躍するヒット作となった。同機で採用されているインバーターと同方式のものが京浜急行 2100 系等でも用いられ、その独特の音から 「ドレミファインバーター」 などと言われている。


場所柄、黄色いオランダナンバーの車 (左のVWパサートもそうだ) の見学者も多い。
下:この TR08 試作車のようにDB (ドイツ鉄道) のロゴを付した営業車両を見たかった。
Der TR08 mit DB-Logo am Bahnsteig des Besucherzentrums in Lathen

このように、既存の鉄道設備という膨大な社会インフラと互換性が無い磁気浮上方式は、レール方式最速の鉄道より 「遥かに」 高速でなければ予算の正当化は困難だ。ところがTRの営業最高時速 (430km) は日本方式 (500キロ予定) より遅い反面、欧州大陸では上記のように既存の在来鉄道網も高速化してきたうえ、軌間が同じ 1435 mm なので新・在直通も容易だ。更に TR に不利な事に、欧州の納税者意識は極めて旺盛で予算に対する国民の目は厳しいときている。



上:TRの軌道を下から見ると軌道の 「内臓」 が少し見える (TVEにて)。下:こちらは独 Sengenthal
の TR07 保存車の妻面だが、進行方向左側は 「身」 (浮上・駆動機器) の部分が抜かれている。
Von unten betrachtet mutet die Trasse des Transrapid fast wie innere Organe an...

その結果、80年代に計画された総延長 5300 km という壮大な欧州TR網構想は影を潜め、自己完結的な交通体系に販売目標をシフトしつつある。まず考えられるのは TR の高加減速力に専ら注目した短距離のシャトル輸送だ。この類型では大空港でありながら欧州的には都心から遠いミュンヒェンの空港シャトルが最有力候補となった。2007年9月、バイエルン州政府は MUC 空港・中央駅間の 37.4㌔ をTRで10分で結ぶ計画を一旦承認し、2008年には空港シャトルというコンセプトに即したセミクロスシートの近郊型客室を有する TR09* が竣工し、メトロラピッドと称した。たが、その後予想建設費が当初見込まれた18.5億ユーロ (約3050億円) から34億ユーロ (約5600億円) とほぼ倍増が見込まれた為、2008年3月27日、惜しくも計画中止決定がなされた。この類型では他にもオーストリアのウィーン空港と隣国スロバキアの首都ブラティスラーヴァ (独名 Preßburg、最寄の大空港は地元の Bratislava 空港ではなく40キロ先のウィーン空港だ) 間等も 候補* に上がったが、続報に接しない。



TRのライバル、複数電源対応の ICE は、前世紀に作られた橋や駅
(左下) だろうと、外国 (右下 )だろうと、レールさえ繋がっていればどこに
でも乗り入れ、祖先の遺産を無駄にしない汎用性の高さも強味だ。

長距離区間であっても高速鉄道が存在しない国ではチャンスがある。この類型では、非電化区間が多く在来鉄道の速度が低く、かつ島国である故に (英仏海峡特急ユーロスター (第29話 参照) を除き) 交通体系が自己完結的で国際相互乗入を考慮する必要の無い英国がまず考えられる。英国の急行列車に多用される IC125 はディーゼル駆動なので時速125マイル (200キロ) がやっとのうえ、排ガスと騒音がひどい。果たしてTRの技術を用いてグラスゴー⇔エディンバラ⇔ヒースロー空港・ロンドンを結んで大ブリテン島をほぼ縦断する長距離リニア新幹線計画が存在した。が、残念ながらこれも続報を聞かない。





上:フランクフルト・アム・マイン中央駅に並ぶ ICE3 (右、最高時速330km) と ICE4 (左、同230/
250km)。ICE3 が専ら高速新線を走るのに対して、ICE4 は在来線の高速化が主な役割だ。
下:ロンドン・キングスクロス駅に停車中の IC125 のディーゼル機関車。欧州
大陸と異なり、英国の鉄道は電化率も低く特に地上設備は古色蒼然としている。
5 TRの今後

2006年9月22日、TR08 は軌道上の作業車に時速約 170 キロで激突・大破し、23 名の方々が亡くなられた。人為ミスと報じられた。犠牲者の方々のご冥福をお祈り申し上げる。タイミングも悪かった。税金の使途に対する納税者の監視の目が厳しいドイツで磁気方式かレール方式かを議論しているさなか、前述のタウルスが在来線機関車世界最速記録を更新した僅か20日後の痛恨の不祥事でもあったのだ。前号 で述べたようにドイツの国策としての TR 開発計画は2011年に終わった。しかしドイツ方式のリニア (TR) も、次々に現れる障害を乗り越え、日本方式のリニアや在来型高速鉄道と切磋琢磨しつつ今後も発展していく事を望む。

次号は北極圏からお届けする。
Nächster Halt: Schwedischer Polarkreis

最終更新:2016年7月 / Letztes Update: Juli 2016
 
本号のJR山梨実験線の写真の一部は、撮影に同行した高井巖雄様撮影の写真をご本人の許可を得て利用させて戴いた。
 
 
     
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本連載の画像・音声・動画は引用注記の無い限り筆者が撮影・録音。
資料は各脱稿日現在の該当会社・団体のHP、WikipediaWebsite über die schnellsten Züge der Welt 各所掲のデータを参照したもので、それ以上の検証は行っていない。
意見にわたる箇所は全て筆者の私見である。
   
 
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