Trans Eurasien Expreß seit 2002

 
erscheint i.d.R. vierteljährlich und behandelt bedeutende und/oder interessante Eisenbahnen und sonstige Transportmittel in der Welt, mit Vergleichen zwischen Japan und dem Ausland, Geschichts- und Kulturvergleichen - je nach Thema der Ausgabe. Alle Fotos, Ton- und Videoaufnahmen wurden vom Author selbst aufgenommen, soweit keine fremde Quelle ausdrücklich vermerkt ist.

Mikio Tanaka

 
     
   


 
20.天空を駆ける地下鉄 (前編)

- ベルン高地・小峠の群像 -
U-Bahn im Himmel und sonstige Verkehrsmittel in Berner Oberland 1
今回の取材地: スイス


現地観光案内所のパンフをスキャンして番号を記入
Eingescanntes und leicht bearbeitetes Foto aus einer Broschüre der Touristeninformation vor Ort

登山家に限らず、山岳美を愛する人は多い。今号と次号はスイス北部のベルン高地Berner Oberlandの3D景観を楽しめる乗物をご紹介する。冒頭の鳥瞰図は次号と共用で、今号はスイス連邦鉄道SBBと接続しベルン高地観光の起点とも言うべきインターラーケンInterlaken(❸)からグリンデルヴァルトGrindelwald(❽)・ラウターブルンネンLauterbrunnen(➎)の谷を経てクライネ・シャイデッグKleine Scheidegg(❶、小峠の意)までの鉄路を、そして次号では❶から更に高みのユングフラウ・ヨッホJungfraujoch(❷)までの鉄路と鉄道以外の交通手段について、それぞれまとめてみる。



左(B777):高度10キロ、右(コンコルド):高度20キロ
Links (B777): Blick aus 10 km Höhe, rechts (Concorde): aus 20km Höhe. Die Fotos
zeigen, dass die Schönheit des Ausblicks mit zunehmender Höhe nicht zunimmt. In
dieser und der folgenden Ausgabe werden die plastische Schönheit des Berner Oberlands
zusammengefasst, die man in verschiedenen Fortbewegungsmitteln geniessen kann.

高さだけなら9km弱(8848m)のエベレストはベルン高地の倍の高さだし、民間機の巡航高度はヒマラヤより更に高い約10km、コンコルド第59話参照)に至ってはその更に倍の20kmだった。隣の惑星の火星まで範囲を広げるとオリンピア(又はオリンポス)山Olympus Monsという標高基準面 からの高さ27キロ という途方もない太陽系最大の超高山があるという。コンコルドから見た空(写真右)は日中でも既に青黒く、少し宇宙空間に近付いた感じがしたが、 これよりも更に7キロも高い山頂からの景色とはどんな世界か興味はある。しかし飛行機の窓側に座ってもブラインドを降ろしてしまう人が多いように、地上の景色は高ければ美しいというものではない。ベルン高地の美しさはその立体的造形と、その表情と移動手段の多様性にある。



朝日を正面に浴びつつ急勾配に挑むラウターブルンネン・ミューレン登山電車Bergbahn Lauter-
brunnen–Mürren (BLM)。線路中央に敷かれたラックレールに、台車内蔵の歯車を噛ませて走る。
Aussicht vom Führerstand der Bergbahn Lauterbrunnen-Mürren. Die Bergbahn
des Berner Oberlands fährt entlang der schönen Gebirgsstrecke biis auf
Höhe der Kleinen Scheidegg, die in dieser Ausgabe vorgestellt wird.

ベルン高地の中心はアイガーEiger・メンヒ Mönch・ユングフラウJungfrau三山だ。観光拠点として日本で人気が高いのはアイガー側の谷にあって土産物屋が充実しているグリンデルヴァルトだ。同村のHPには松本市(穂高・上高地・乗鞍を擁し1972年にgグリンデルヴァルト と姉妹村提携をした安曇村を2005年に「吸収合併」した松本市はこの姉妹関係も引き継いだ)や妙高市 との友好関係が謳われ、日本人観光客誘引へ熱意が伺える。しかし、同じ谷なら反対側のラウターブルンネンの方が静かでかつ夏季は落差300mのシュタウプバッハStaubbachの滝が景観上の素晴らしいアクセントになっており、絵に描いたような谷底感覚を楽しめる。

雪解け水は滝だけではなくSchluchtといわれる岩壁内部の裂け目を突き下って川に至るルートもあり、水量の多い時期は狭隘な暗黒空間を割らんばかりの轟音と音圧には恐怖を覚える程だ。「騒がしい泉」を意味するLauterbrunnenの由来はこれだろう。


上:クライネ・シャイデッグに到着するJBの下り電車。背後のシャレー
がホテル・ベルヴュー・デザルプ。下:アルプスの朝焼けが美しい。
Vom Hotel Bellevue des Alpes auf der Kleinen Scheidegg
hat man einen Blick auf das wunderbare Alpenglühen.

ラウターブルンネンもフォトジェニックで撮影心を誘うが、この地域最大のお勧めはクライネ・シャイデッグだ。ベルン高地3山の懐に抱かれた深山にホテル・ベルヴュー・デザルプHotel Bellevue des Alpes*の2棟のシャレーがあるのみだ。ベル・ヴュー(仏)、Schöne Aussicht(独)等「絶景」を名に冠した宿は掃いて捨てる程あるが、 ここは看板に偽り無し、標高2070mの天上にあって夏はお花畑の中、冬は雪に閉ざされた銀世界の中の一軒宿だ。しかも車乗入禁止の秘境にもかかわらずグリンデルヴァルト・ラウターブルンネン・ユングフラウへの登山鉄道3線の乗換駅となっており、交通の便も良い。駅といってもシャレー風の駅舎がぽつんとあるだけで、模型のような電車が時折目の前を通り過ぎていくのも鉄道好きには楽しい。次号でご紹介する ヘリポート兼用の小さな丘も間近にある。



Kleine Scheidegg kurz vor Tagesanbruch

退屈なコンクリート建築の宿が増殖する中で、ここは 19世紀の建築がそのまま残されているスイスでも珍しい宿だ 。夜明け前にみしみしと木製の階段を降り、古い洋館独特の懐かしいような匂いの漂う無人のロビーを通り抜け、戻れる事を確認したうえで(自動ロックがかかれば凍死しかねない)きーんと冷たい戸外に出てみた。雪原には誰もいない。SF映画的に言えば「生物反応無し」の状態で、白みつつある満天の空も、その満天を刺す凛然たる峰々も、雪が霜降状に張り付く隆々たる山塊も、上下左右360°独占状態だ。ずぼっ・・ずぼぼっ・・と雪を踏む足を止めさえすれば、直ちに無音の世界となる。己の僅かな呼吸音すらも雪が吸収してしまうかのような徹底した無音の世界だ。聴覚的ノイズだけではなく、人工的構造物という視覚的ノイズも殆ど無いのも麓の村々とは別天地である事を実感させる。



Schneepflug mit Gesicht

ホームと思しき辺り(除雪前なので判然としない)まで行くと面白いものを見つけた。一方にロータリー除雪機、他方に座頭市のような人面ラッセル器を取り付けた木製電車だった。ユーモラスな顔がすっかり気に入ってしまった。メルクリンでもマイクロエースでも、どこかこの逸品を模型化してくれないだろうか。

青紫色→群青色→茜色と不断に変色する大空と 、アルペングリューエンAlpenglühen又はちょっと訛ってアルペングリュンAlpenglüh'n(アルプス焼け)と言われる赤い朝日に輝く山頂を仰ぎながら、暖かい朝食が恋しくなり宿に戻った。この間、遂に誰にも会わなかった。



Schneefräse mit alten JB-Wagen als E-Lok

この立体的で変化に富んだベルン高地を如何に攻略するか。登山愛好家なら爽やかに汗をかき、澄んだ空気で己が両肺を満たし、路傍の水飲み場で喉を潤し、折り重なる秀峰にヤッホーなどと叫びつつ自分の足で山道を踏みしめながら山頂を目指すだろう。しかし筆者のような乗物愛好家は、色々な乗物を乗り比べながらメカと大自然とのハーモニーを追及しなければならない 。



Typisch CH - Hier ist es möglich, von oben auf Gleitschirme herunterzublicken

山岳地帯の醍醐味はその立体的な景色にあるので、3D美 を堪能するのに適した乗物で攻略する必要がある。乗物を移動方向という視点で分けると一次元・二次元・三次元の運動ができる移動手段に分かれる。一次元の移動、即ち線上を行ったり来たりしかできないものの典型は鉄道だ。勝手に右折もできなければジャンプもできない。 二次元の移動、つまり面運動の代表選手は自動車だ。軌道に制約されず面を動き回れる。 三次元の移動、つまり空間運動に最も適した乗物は航空機だ。ベルン高地における面移動と空間移動については次号で述べる 。



通り過ぎるWABラウター・ブルンネン線の電車を眺める牛君
Die Kuh mit Kuhglocke blickt der vorbeifahrenden WAB Bahn nach.

1890年(明治23年)開通の Berner Oberland Bahn ベルン高地鉄道(BOB)は、インターラーケン(インターラーケン東 Interlaken Ost 駅でスイス連邦鉄道 と接続)とベルン高地のグリンデルヴァルト ・ラウターブルンネン 両村をY字型に結ぶ私鉄だ。全線が38km強と比較的長く、高速運転と登坂能力とを両立させる為に、平坦区間は鉄輪とレールの摩擦による通常運転(粘着運転という)でスピードを出して距離を稼ぎ、途中4箇所ある急坂区間のみ台車内蔵の歯車Zahnradを下げてラックレールに噛ませてガリガリと坂越えを行う。歯車式⇔粘着式のモード切替は徐行運転中に行うが、日本には無い技だ。インターラーケンから分岐駅のツヴァイリュッチーネンZweilütschinenまで両終点行の電車を併結運転するパターンが多い。



ラウターブルンネン駅で発車を待つインターラーケン行BOB旧型電車。
駅構内を出ると直ちに下り勾配となる。現在は同駅は大屋根で覆われた。
Am Bf Lauterbrunnen wartet ein altes Modell eines Zuges der BOB
nach Interlaken auf die Abfahrt. Heute ist der Bahnhof überdacht.

グリンデルヴァルトとラウターブルンネンからはそれぞれWengernalpbahnヴェンガーン・アルプ鉄道(WAB、1893年蒸気方式で開業)が山肌をよじ登り、軌間800ミリの線路は山上の クライネ・シャイデッグで 繋がっている。19余キロという路線長は全線ラックレール鉄道としては最長であるという。平坦地のモーター音に慣れた耳にはモーターの回転音が高く感じる。急勾配を走れるように歯車比を高く取っている為だろう。多客期には 路面電車や夜行バスのように同一ダイヤで数本を続行運転させて捌いている。WABでクライネ・シャイデッグまで上り、スキーで麓に滑って戻る乗客の為スキーラック付の無蓋貨車を従えた姿がWABの冬の風物詩だったが、低床式の新型車では車内にスキーラックを設ける方式に変更された。


クライネ・シャイデッグに到着するWAB グリンデルヴァルト線上り旧型電車
Ein Zug der WAB erreicht die Kleine Scheidegg. Bei den neuen Modellen befinden sich
Ski-Befestigungsvorrichtungen im Wagen, und dieser angekoppelte Frachtwagon wurde abgeschafft.

グリンデルヴァルト・ラウターブルンネン それぞれから上ってきたWAB電車はクライネ・シャイデッグ駅で顔を合わせる。両線は電圧・軌間共に共通規格で線路も繋がっているが、直通運転は行われない。これは安全上の理由から重石代わりにもなる制御電動車(JR式にいえばクモハ)を常に麓側に連結する為というが、クライネ・シャイデッグにはスイッチバック線 Spitzkehreも設けられ、一応方転のうえ直通できるようにはなっている。ならば3両固定編成をクモハ+サハ+クモハとして両端に「重石」がくるようにすればスイッチバックに寄道せずにこの問題は解決するように思うのだが、それではコストがかかり過ぎるのだろうか。


クライネ・シャイデッグ(右上)から山を 下る、ラウターブルンネン
行WAB電車 (左下)を、氷河航空ヘリ(次号参照)より鳥瞰
Zug der WAB (links unten) fährt von der Kleinen Scheidegg
(rechts oben) den Berg nach Lauterbrunnen hinunter.

WABで最も輸送密度が高いのはラウターブルンネン・ヴェンゲン間だ。これは自動車乗入禁止の為WAB線がヴェンゲン村(及びそれ以高の集落)のライフラインにもなっている為で、貨物輸送も活発だ。そのWABラウターブルンネン・ヴェンゲン間には当初250‰区間があったが1910年からは180‰に緩和された新線に切り替えられた。旧線は現在貨物輸送に用いられているが、9月のユングフラウ・マラソン期間中にノスタルジー列車が運行される。途中の崖に張り付くヴェンゲン村からはラウターブルンネン峡谷の3D景観を楽しむ事ができる。



Die an Schneekristalle erinnernde weihnachtliche Beleuchtung am Gebirgshang in
Mürren leuchtet über dem Tal von Lauterbrunnen verschwommen wie ein Mond

クリスマスシーズンは谷の反対側のミューレンMürren側の絶壁に巨大な雪印のイルミネーションが吊り下げられる。取付位置が高いので月のようだ。日本と異なり欧州のクリスマスは静かで、蝋燭のような点光源が町の静寂を一層印象付ける。



Die Freiluft-Bar aus Schnee am Bf Kleine Scheidegg. Thema der nächsten Ausgabe
ist die „U-Bahn im Himmel“, die Strecke von der Kleinen Scheidegg in noch höhere
Lagen, sowie sonstige Verkehrsmittel womit man die 3D-Landschaft genießen kann.

クライネ・シャイデッグは前述のように3線の乗換駅でもあり、発車待の時間を楽しく過ごせるように暖かいレストランもあれば、雪で突き固めた絶景青空バーもあり、ここで一杯やらない手は無い。雪景色の中、アイスを頬張っている2人連れがいた。マロージュニェ(アイスクリーム)が大好物のロシア人は凍てつく厳冬の戸外でも平気でアイスを舐めているがロシア人に限らないのだなと思ったら何の事はない、ハラショーとか言っている。よく見るとスラブ顔だ。寒い冬の戸外では、熱く燗した赤の安ワインにシナモン等をまぜた グリューヴァインGlühwein(燗ワイン)で暖を取るのがドイツ語圏流だ。

次号はクライネ・シャイデッグ以高の天空の地下鉄と、車やヘリでの愉しみ方をご紹介する。

第21話・「天空を駆ける地下鉄」・後編に続く
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資料は各脱稿日現在の該当会社・団体のHP、WikipediaWebsite über die schnellsten Züge der Welt 各所掲のデータを参照したもので、それ以上の検証は行っていない。
意見にわたる箇所は全て筆者の私見である。
   
 
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