Trans Eurasia Express since 2002

 
is a quarterly articles series, now kindly hosted by H.I.S. London (until No.49 by H.I.S. Touristik Deutschland GmbH) on interesting trains and other means of transportation in Europe, Asia and other corners of the world, with technical, historical and cultural interests. All photographs, sounds and videos are taken by the author unless otherwise expressly mentioned.

Mikio Tanaka

 
     
   


 
55. 北海の海上トロッコ

Island Railways in the Wadden Sea
今回の取材地: ドイツ


波頭が線路を洗う海上区間を行く
A diesel train is heading the Nordstrandisch-
moor island at high tide (April 2014)

1 Watten 海の「海原電鉄」と大地水没

脱稿日現在の Wikipedia によると、日本公開映画興行成績1位は「千と千尋の神隠し」(2001年)で、2位の「タイタニック」を約40億円、3位の「アナ雪」を約50億円引き離してのぶっちぎりトップだ。同映画後半で登場する意味ありげな「海原電鉄」第25話参照) も見所の一つで、同鉄道の走る大草原や沼地は時に冠水し一面の海と化す。映画では黄泉の国の辺境地帯という設定だったように思えたが、この海原電鉄を彷彿させる鉄道が「この世」に現存する。北海の海上トロッコがそれで、冒頭の写真は2014年5月に撮影したものだ。



The North Frisian Wadden Sea – Island trains marked as ② and ③ are the subjects of
this article. The DB line marked as ① will be reported in No. 57 of these article series.

上はシュレースヴィッヒ・ホルシュタイン Schleswig-Holstein (以下「SH」) 州の沿岸保護・国立公園・海洋保護局 Landesbetrieb für Küstenschutz, Nationalpark und Meeresschutz (略称LKN) にあった地図に赤文字を書き加えたものだ。濃緑が独 SH 州、淡緑がデンマーク領、海中の白~灰色部分が北海 Nordsee 東方のヴァッテンメーァ Wattenmeer (日本では英語読みで「ワッデン海」とも) という広大な干潟だ。かつてヒットラーはここを干拓し1万㎢もの陸地を創出しようとしたが、現在は自然公園として海陸が溶け合う独特の景観が保護されている。①が第57話で紹介予定のズィルト Sylt 島 (「ト」字形の大きな島) と本土を結ぶドイツ鉄道DB線、②が本土ダーゲビュル Dagebüll からオーランド Oland 島を経てランゲネース Langeneß 島を結ぶ海上トロッコ線 (以下便宜上「北線」)、③が本土リュットモァズィールLüttmoorsielとノルトシュトランディッシュモーア Nordstrandischmoor (「北にある浜のような沼」の意、長いので以下「北浜沼」) 島を結ぶ海上トロッコ線 (以下「南線」) だ。本号では②③の順でご紹介する。



Old photos of the island trains in Juist (top and mid left, now abandoned), Oland
(bottom left, before levelling up the track) and Lüttmoorsiel (bottom right).
Sources of these pictures are mentioned after the below paragraph.

かつてこの極端な遠浅な一帯には多くの軽便鉄道が走っていた。それらは大別すると、(i) 沖合に設けざるを得なかった洋上船着場と島中心部を結ぶ 埠頭鉄道 的なものと、(ii) 潮の干満に伴う速い潮流 (1時間で陸地が海に一変する) を緩和して本土の堤防浸食を防ぐ為の海中堤の上に鉄道を敷いて本土連絡交通を兼ねるもの、に大別できる。(i) の歴史は馬車鉄道に遡り (軌道の両側から馬2頭が海底をじゃぶじゃぶ歩きながら列車を牽いた)、蒸機化・ディーゼル化を経て1980年代に全廃された。浚渫工事で船が島に直接着岸できるようになった為だ。(ii) は北線と南線の2線のみが残る。満潮時は軌道が水没して運行不可だったが、今世紀に入って潮の干満に無関係な (ドイツ語というのは造語能力に優れ、これを gezeitunabhängig と一語で表現できる) 終日通行を可能にする為65㎝の嵩上工事が進行中だ。

 
注:上の組写真は全て引用なので、以下にソースを示す。(所定の大きさに合わせる為一部トリム)

【上・中左】 http://www.inselbahn.de ユイスト線ギャラリー (Hans-Peter Gladtfeld氏撮影) より引用。
今は無きユイストJuist島鉄道の正面2枚窓のディーゼルカーが海面を蹴る (1978年。茶色に塗り「中道」行の行先表示板を付けたら海原電鉄になる。ユイスト島鉄道の動画 も必見。
【左下】 http://www.inselbahn.de 北線ギャラリー (Martin Freundlich氏撮影) より引用。
海に潜る線路。浦島線竜宮城行がやってきそうだ。
【右下】 http://www.ipernity.com/doc/anke/12036606 (Anke氏撮影)より引用。
南線が一直線に金色に輝き渡る。
 


Land unter現象時は人工丘の頂上部だけが顔を出す幻想的光景が広がる。
地球温暖化による海面上昇は島での生活存続にかかわる問題だろう。
The "Halligen" are ten small mudflat-islands in the Wadden Sea without
protective dikes. The residents live on the "Warfts" (artificial hills) to
avoid floods called "Land unter". Sources of these pics are shown below.

ヴァッテン海に点在する、標高≒海面で海陸の境も曖昧な沼状の島々をハッリゲン Halligen (単数ではハッリヒ Hallig) と言う。茫漠と広がる草原や沼地は高潮時には水没し、一面の海と化す。これを現地では Land unter (landunterとも。意訳すれば「大地水没」) と表現する。そこで島民は所々にヴァルフト Warft という人工丘を築き、そこに家を建てて暮らしている。左上は大地水没時の現地紹介本の表紙だ。庭の大きな丸池の真水はかつては命綱だったが、現在は本土から水道管が引かれている。

 
注:上の組写真も引用なので、以下にソースを示す。(所定の大きさに合わせる為一部トリム)

【左上】 「Wir Halliglüüd」 (「Wir Halligleute我らハッリヒ者」 の方言と思われる) 出版元:Biosphäre Halligen、2003年
【右上】 www.inselbahn.de 北線ギャラリー(H.-R. Rüsen氏撮影)より引用
【下】 北浜沼島紹介記事 (Adrienne Friedlaender 氏撮影)より引用。
 
2 北線(Langeneß島 ⇔ Oland島 ⇔ 本土Dagebüll)

1927年開通の北線は全長9キロ、単線非電化で軌間 900㎜ だ。本土側の起点はNEG鉄道ダーゲビュル駅 (ハンブルグからドイツ鉄道DBの直通列車もある) から徒歩約15分の草むらの中にある。鉄道設備は SH 州所有で、上述のLKNが管理する。



The privately owned “Lore” departs from Dagebüll and enters the sea at low tide.

トロッコ駅 Lorenbahnhof を出たトロッコはまず堤防を駆け登り、今度は反対側の坂を下り、そのまま海に入っていく。羊が放牧されている堤防を歩いていると、ベンチ形無蓋トロッコがやって来た。警笛が無いのか、線路上に居座る羊を声で威嚇する。4月末というのに防寒着で完全防備の親子連れのトロッコは、今日の北ドイツの一般的光景となった発電用風車の巨林を背景に干潮の潟を去って行った。遥か沖合には大規模な洋上風力発電所が建設中で、併せて産業集積地のドイツ南西部まで高圧送電線の建設工事も進行中だ。日本は風の強い海岸線は長いが再エネは太陽光が漸く増えてきたところで風力発電は僅か、洋上風力発電に至っては緒についたばかりだ。ドイツほどの経済大国が脱原発 Atomausstieg を実施する本気度が見える。



中右:車検制度があり、また運転は15歳以上で少なくとも原付免許が必要。
Most of the privately owned Loren are almost hand-made. All Loren need safety
inspection, and the driver must be at least 15 years old with at least moped license.

ヤードには有蓋・無蓋、LKN の本格的なものから手作りに近い民間車まで様々なトロッコが並んでいた (上)。緩衝器には古タイヤや使用済の船舶用ドックバンパーや小型ブイ等を用いていたのが節約精神旺盛なドイツらしく、また海洋集落らしい。有蓋トロッコの小さな窓が、冬の厳しさを物語る。有蓋車の多くはエンジンが車室内に張り出しているが、「Bobkat」と大書された新車 (下左右) はエンジンをボンネットに格納して車内空間を稼いでいる。地元では名車のようで、LKN 職員の方が 「3万ユーロ (400万円強) もしたそうだ」 と呆れたように言っていたので、他の民間車はもっと安いのだろう。島民は本土連絡用のトロッコだけでなく島内移動兼農作業用のトラクターと本土移動用の自動車も必要なので、結構物入りだ。



干潮時の作業用にスキー場から購入した中古の無限軌道車もあった。
State-owned rolling stocks. The salon car (above left), which was once used
by the German President, is somehow called “Sambawagen” (samba car).

LKN 所有車はホッパ車を始め結構本格的で、特に Sambawagen ザンバ・ヴァーゲンと呼ばれる大窓客車は貴賓車も兼ね、大統領 (米国の大統領と異なりドイツでは政治権力を持たない象徴的存在) の Halligen 視察にも用いられた。落ち着いた意匠なのになぜサロン車 Salonwagen ではなくサンバ車なのかは謎だ。車内中央に大きな暖房機が鎮座する。左下の人車 (冒頭の写真手前の車両) 内部は小窓で殺風景だが、クッションの置き位置を見ると簡易寝台車的使われ方もされているのかもしれない。テーブルもあり、存外落ち着けそうだ。



Top right: an old photo of a sailing train. Below: SCHÖMA’s locomotive running
on the sea surface was proudly depicted in the calendar of the said manufacturer.

2014年4月の初訪問時は調査不足で海上トロッコは島民か島の宿泊客以外は乗れない事を知らず、翌年9月にハンブルグに用があった際に捲土重来を期して出直した。この時は予めLKNの許可を得て北線では保線運転 Wartungsfahrt に同乗させて戴き、また南線では民宿の客となる手筈を整えてきた。早暁 06:45 に LKN 北線整備工場に出頭、まず事務室で海上トロッコの歴史を伺い、興味深い関連記事や写真を多数拝見した。特に帆走式トロッコ (現代風に表現すれば洋上風力鉄道) の古写真 (右上) や、海上を走る自社機を写したシェーマ社のカレンダーは傑作だった。シェーマ SCHÖMA (クリストフ・シェットラー機械製造有限会社 Christoph Schöttler Maschinenfabrik GmbH の略) は坑道用等特殊小型機関車の専門メーカーで、当日見かけた機関車は全て同社製だった。



Dreedusendは標準語Dreitausendの北独方言(低地ドイツ語
Plattdeutsch)だが、よそ者は運転しないから方言で良いのだ。
If oncoming trains meet each other, the state-owned train has the priority. If both
trains have the same level of priority, the train which first arrived the median point has
the priority. “Dreedusend” is a dialect of Dreitausend (3000) which is signposted at the
midpoint of the 6km-ocean section. Several “Chinese Walls”, et al. are built to prevent
the foxes from travelling to the Halligen using the track, in order to protect sea birds.

単機運転のシェーマ機の助手席に乗って出発した。上:夜が明けたばかりの北線に対向車の明かりが見えた。全線単線で信号機も無く交換施設の数は限られているので、LKN車は民間車に優先 (トロッコ線の民間利用はLKNの黙認geduldetという形を取っている為)、同格車同士では先に中間地点を通過した車が優先 (対向車が最寄りの交換施設まで引き返す) するルールだ。中左がダーゲビュル・オーランド島間の中間地点を示す3000メートル標識だ。右下:「狐落とし Fuchsfall」 と言われる箇所で、軌道をスカスカにして狐が上を歩けないようにしてある。これは「軌道が終日水没しなくなれば本土の狐が渡り易くなり島の海鳥の卵や雛を捕食する」等の理由で嵩上げ反対運動があった為だ。満ち潮や引き潮時にここに潮流が集中しないよう片側に鉄板が打ち込まれているが、落ちた狐が脱出できるよう反対側は空いている。



左下:時々ある窪地はこのように簡単な仕掛けでひと跨ぎしていく。
Island of Oland - As opposed to other Halligen, there is only one Warft in
Oland, on which all residents of the island live. The entire plain (with the only
exception of the Warft) will be under water at storm surge called “Land unter”.

上:本土の大堤防を越えた瞬間からだだっ広い景色を走ってきたトロッコは、いつの間にかオーランド島に上陸した。海岸線の大部分は海陸がせめぎ合い境がわからない。右下:正面にオーランド島の大型人工丘が見えてきた。この上に全島民が住むのが同島の特色だ。年に何度かある大地水没 Land unter 時には、大草原はこの一点を残して全て海没する。

この辺りも「千と千尋の神隠し」に通じるものがある。「楽復」と銘打たれた門を越すとぱっと景色が開け緑の大草原が広がるが、時に水没して一面の海と化す。水没しない高台には油屋を中心とする不思議の町があり、海面~大湿原の単線軌道を海原電鉄が走る。あの映画が刺さった人は、ふと楽復門を本土の大堤防に、高台を人工丘に、そして海原電鉄を海上トロッコに、それぞれ置き換えて連想してしまうだろう。次の写真の無人の教会の古い扉から暗くがらんとした礼拝堂に差し込んだ陽光が床に吹き溜まった枯葉を照らす様子も、同映画の楽復門 (往路) 出口の描写に不思議と似ていた。宮崎駿はこの辺りまで取材に来たのだろうか。



The Warft on Island Oland is the gem of the Halligen. Thatched houses – even incl.
a church and a light house - made of red bricks surround a pond of sweet water.
A covered bell tower is placed on the ground to protect from strong salty wind.
A votive ship with Danish flags implies that the Danish border is nearby.

オーランド島の人工丘は、海色・泥色・草色の三種の寒色のみが織りなすハッリゲンの世界に1点赤く輝く宝石だ。観光目的ではなかったが、LKN 職員の方は機関車をその辺に停めて (自動車みたいだ) この人工丘を案内してくれた。民家・教会 (左下)・灯台 (左上) を含む全ての建物が赤色煉瓦+藁ぶき屋根で統一され、それらが人工丘中心部の真水の溜め池 (右上) を高波から守るように円形に並び、一幅の名画のように美しい。他の島の人工丘は小さく民家が1~2軒乗っている程度なのに対して、この島では全ての建物が大型の人工丘の上に密集する。各戸の放牧地までは遠くなるが、Land unter 時の絶海の孤島状態で住民同士が助け合える効用は大だろう。小さな教会内には遭難事故から生還できた船員が神に感謝して奉納する奉納船 Votivschiff が飾られていた (右下)。商船旗はデンマークで、国境の近さを実感させる。教会の狭い庭は島民の墓地を兼ね、同姓の墓石が並んでいた。鐘楼は風害対策か地面に降ろされ、風防で覆われている。



Top left: This Lore strongly symbolizes the ocean with its blue color and round windows.
Middle right: old and (elevated) new tracks. Bottom right: End station at Langeness.

左上:往路で見かけた青いトロッコは日本の鉄道スラングではゲテモノの部類だが、面魂の良さが忘れられず帰路こいつの横で停車して貰い舐めるように観察した。船のような丸形の側窓も海洋鉄道らしくて良い。トロッコのエンジン (右上) の多くは6~8馬力の芝刈機用ホンダ製だそうだが、ベンツの志を持つトロッコもいた (左下)。オーランド・ランゲネース両島間は嵩上げ工事中の為最徐行だった。ランゲネース島の終着駅は叢の中に手動分岐器と線路が3本ある他は何も無い。向かい合わせ式ベンチ車の私有トロッコが4台、驟雨に濡れていた。ここから先の島内移動は湿原を走れるトラクターだ。



Sylt空港からStuttgartに向かった飛行機から偶然Halligenの島々が見えた。分かり易いよう北線を赤色で強調し、駅(といっても何も無いが)所在地に赤色●を記入した。左はオーランド島で、全島民が住む大型の人工丘が目立つ。下はランゲネース島で、こちらは対照的に小さな人工丘が点在している。
Aerial view of the Halligen Oland (above) and Langeness (right) taken from an AirBerlin flight from Sylt to Stuttgart.

While all houses in Oland are built on a single big Warft, houses in Langeness are built on many small Warfts.

Island railway is highlighted in red.
3 南線(Nordstrandischmoor島 ⇔ 本土Lüttmoorsiel)

南線の本土側起点リュットモアズィールは北線の起点ダーゲビュルの南方約30キロにある。1933年開通の南線は全長3.5キロ、軌間600㎜という超ナローだ。1956年3月に流氷群 (時にアザラシも来るそうだ) に軌道を破壊されたがその後再建され、軌道強化工事が続いている。所有と管理は北線と同じ。



Departure of an LKN train from Lüttmoorsiel – Before entering the sea section, it first has
to climb up and down the huge dyke which protects the German mainland from high tides.

LKN の作業列車 (ディーゼル機関車+人車) がリュットモアズィールのトロッコ駅を発車し遮断機の無い踏切を渡り(左上)、堤防の上でスイッチバックして今度は海側に降り (右上)、浜を横切り (中左) 海に入っていく。上をトロッコが走るこの堤を現地ではトロッコ堤 Lorendamm と呼び、堤への立入禁止の標識がある。撮影時は潮が満ちつつあり、見る見る水位が上がっていく。潮は向かって右から左に流れており、軌道兼ミニ堤防のお蔭で下流側では波が明らかに静かなのがわかる。



600mmの超ナローが波しぶきを浴びつつ海面を這う、満潮時の南線
Impressive view of a Lore-train running on the sea. The Warft on which the Family Siefert
(See Para 3 of this report) lives can be seen with the ultratelescopic lens (bottom).


(冒頭の組写真ともども):ほぼ満潮時の様子。ここは嵩上げ工事が完了した為、満潮時でも軌道は水没しなくなった。中:軌道を波から守る為に道床の拡幅工事も行われた。この角度で見ると消波効果が良くわかるが、アスファルトで固められた事もあり黒々しくなった。下:超望遠レンズで北浜沼島を遠望。島本来の標高は海面より微かに高いだけなので、遠目には人工丘しか見えない。その上に犇めく数軒の農家の右端が以下ご紹介するズィーファート Siefert 家だ。



Since the gauge of this Lüttmoorsiel-Nordstrandischmoor Line is only 60cm, the
benches of the “open-air coach” are put back-to-back, as opposed to the Dagebüll-
Oland-Langeness Line with 90cm-gauge where “face-to-face” arrangement is common.
It must be very comfortable on the ocean in Summer, but must be bitter cold in Winter..


上:南線の本土側トロッコ駅は高い堤防で守られ、島民の本土移動用の駐車場や整備工場もある。左から順に自家用有蓋車、荷台車 (無動力)、自走式ベンチ車。左下:ベンチ車は北線では向かい合わせ式なのに対して、軌間が極端に狭い南線では背中合わせ式で、足は大海原に向かって伸ばす事になる。足先を波しぶきで冷やしながらの海上移動は夏は快適だろうが、冬季や荒天時は御免蒙りたい。



Passing each other on single track can be made at switchbacks on the dyke and on
the beach, as well as at the siding half-way on the sea section. The “main line” ends
at the Northernmost point of Nordstrandischmoor Island and the residents continue their
journey with tractors, except for the Siefert Family: A branch track leads to the “Neuwarft”
(New Warft) and ends direct in front of the door of Siefert Family after climbing up the Warft.

離合のルールは北線と同様だ。無駄な後退を避ける為には耳の良さは重要だ。Siefert 一家と本土側トロッコ駅で待ち合わせた際、ご夫人が急に 「静かに、対向車が来る。どこで離合しようか。」 と言い出して驚いた。筆者には波の音以外何も聞こえなかったが、事実対向車は堤防の反対側に接近しており、堤防上のスイッチバックで離合した (左上)。海上区間 (但し干潮時なので水は無く泥一色の世界だ) の中間地点では優先の筈のLKN車が待っていてくれた (右上)。北浜沼島に上陸してすぐの地点に駅 (といっても叢の中に線路がフォークのように3本に分岐して終わっている他は何もない) があり、ここから先は各人工丘の民家までトラクターでの移動となる。しかし上陸地点最寄りの Siefert 家のみは駅から分岐 (左下) した専用線が自宅まで直通しており、最後は人工丘を登って玄関前に到着する (右下)



Siefert家のトロッコはステンレス製の有蓋車だ。写真左下・右端のポール上部は庭仕事用
の電源用コンセントだ。増水時にも水没しないように、笑ってしまうほど高い位置にある。


左上:この角度から見ると民家が人工丘上にある事が実感できる。右上:本土で仕入れた荷物を荷台車から降ろすご主人。自宅玄関前に自家用鉄道を横付けする光景は初めて見た。左下:庭先にはシェーマ製の中古ディーゼル機関車1両、小型荷台車と羊輸送車が並び、ちょっとした私鉄だ。この広大な光景の中に置かれた滑り台と屋根付きテラスに作られたブランコとクライミング遊び用の縄(右下)を見て、遊び相手の少ない子供への親心を思った。窓に面した椅子は Strandkorb 浜籠といい、寒風を避けて日光浴をする為に北独で良く見かけるものだ。こちらは両親用と見た。



左上の家は生徒・先生各1名のドイツで一番小さい小学校の由。
相性が悪ければ双方にとって不幸だろう。ここでも鐘楼は地面に置かれ
風防がなされていた。潮風の強いこの一帯の標準規格なのかもしれない。
All houses are built atop the Warfts. The house with a small bell tower (top left)
is the smallest school in Germany when the photo was taken (September 2015),
with one kid and one teacher. Below: Mr. Siefert selects sheep for shipping.

この島はランゲネース島同様人工丘1基に民家が1~2軒ずつ載っている (上)。ハッリゲンの島民の仕事は沿岸保護業務・牧畜・民宿経営等多様なようだ。この日は羊を本土に出荷するというので見学させて戴いた。羊が逃げ回らないようまず柵を回し、家畜運搬車付近の一隅に羊を追い込む (左下・中)。体重45kgを越えた個体を出荷するので、Siefert氏ご自身の体重を引いた重さが表示される設定の体重計に羊ごと乗って選別を行う (右下)。取材時点で出荷価格は € 2.5/kg、1頭約€120の由で、この日は4頭を出荷したので約 € 480 (約65000円) の売上となる。この一帯の羊は水さえやっておけば放っておいても育つというが、これを高いと見るか安いと見るか。



A Lore-train apparently with two families who seem to be guests of one of the Warfts is
approaching. After its arrival at Nordstrandishmoor “station” (without any building, signal
or platform) Family Siefert’s train carrying four sheep departed to the German mainland.

本土に出荷する4頭を乗せた家畜運搬車を推進する Siefert 家のトロッコが同家専用線から本土連絡線と合流する手前で対向車を待つ事数分 (ここでも筆者は遥か遠方の対向車が当初見えなかった)、民宿客2家族分を乗せた対向列車が海から陸に上がってきた (上)。毛布の膝掛をして寒そうな民宿車をやり過ごすと同時にSiefert車も発車した。筆者がこの島を再訪する事は無いだろうが、哀れな羊君達は帰島は勿論、翌日を迎える事ができたかも怪しかった。羊肉は解体当日が柔らかく美味だそうなので、運の良い客の当夜の食卓に上っていたかもしれないのだ。この夜、筆者は魚料理を食べた。




準急ユーラシア、次号は Mandø 島に停車する。
Next Stop of the Eurasia Express: Mandø (DK)
Expected arrival: February 2016

(2015年11月 / November 2015)
 
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資料は各脱稿日現在の該当会社・団体のHP、WikipediaWebsite über die schnellsten Züge der Welt 各所掲のデータを参照したもので、それ以上の検証は行っていない。
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